口腔衛生学会雑誌
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幼児の齲歯の多発と生活習慣との相関関係についての研究
偏相関係数を用いた統計的分析による
栗田 啓子
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1983 年 32 巻 5 号 p. 541-562

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抄録

幼児齲歯の多発, 発症の原因を解明する目的で, 北海道辺地の幼児について, 2541名を対象として, 生活習慣6項鼠を設定し, 齲蝕罹患に及ぼす影響を偏相関係数を用いて分析した。併せて, コーホートを用いた経年的研究および細菌学的検索をも実施して, 次のような結果を得た。
1. 牛乳摂取によって乳前歯および乳臼歯の齲歯多発は抑制傾向を有意に示していた。
2. 清涼飲料摂取によって乳前歯, 乳臼歯とも齲歯多発傾向が強くみられ, 乳臼歯齲蝕の重症化にも影響を及ぼすことが明らかにされた。
3. 甘味菓子類の摂取は, とくに乳前歯の齲歯多発および, 乳臼歯齲蝕の重症化に対して強い影響がみられた。
4. 齲蝕罹患に対する影響を清涼飲料と甘味菓子類とを比較して検討したが, 全歯および乳前歯の齲歯多発には清涼飲料が有意に関与し, 乳臼歯齲蝕の重症化には甘味菓子類のほうがより強い影響を示していた。
5. 間食摂取については, 齲歯を多発させる傾向は有意に認められなかった。
6. 子供自身による刷掃の齲蝕抑制効果は極めて少なかうた。
7. 母親による刷掃については, 指標に用いた各齲歯数および乳臼歯顔蝕の重症化に対して, 偏相関係数による分析では有意な抑制傾向を認めた。
8. コーホート分析の結果は, 偏相関係数を用いた分析結果を支持し, 生活習慣の改善によって齲歯の多発および重症化を抑制し得ることを明示した。
9. 幼児の歯垢中の総レンサ球菌数, Str. mutans菌数について検索した結果, 生活習慣と齲蝕罹患との相関関係を微生物学的検査からも明らかにした。また, 歯垢を材料とした齲蝕活動性試験 (カリオスタット) 48時間値と幼児の生活習慣との関係について検索したが, その結果は各生活習慣の要因の齲歯多発または抑制傾向を明示した。

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