口腔衛生学会雑誌
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学齢期における咀嚼能力と咬合の発達に関する研究
遠藤 浩正
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キーワード: 咀嚼能力, 咬合, 学齢期
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1994 年 44 巻 5 号 p. 665-674

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抄録

咀嚼機能の問題は, 摂食機能の基礎となるものとして, 幼児期から老年期の各ライフステージにわたって考慮されなければならない。そこで今回, 著者は発達期の児童および生徒の咀嚼能力の評価法の確立のために, 小学生と中学生を対象に口腔内診査, 咀嚼値の測定ならびに咬合の発達と咀嚼能力の関連についての解析を実施した。
調査対象は埼玉県下の小学生1年生から6年生までの児童513名 (男子249名, 女子264名) と, 中学校1年生から3年生までの生徒387名 (男子193名, 女子194名) であった。口腔内診査では現在歯数とう蝕の状態について診査を行った。咀嚼能力の測定は乾燥したピーナッツを用いた篩分法によって行った。さらに咬合の発達状態を総咬合力, 平均咬合力および咬合接触面積を用いて測定・解析を行った。
今回の研究の結果より, 以下の結果を得た。
1. 咀嚼値は小学校5年生あるいは6年生で低下し, 中学生ではほぼ一定となる傾向がみられた。
2. 総咬合力, 咬合接触面積は増齢とともに増加する傾向がみられたが, 小学校5年生あるいは6年生で一時的に低下する傾向が認められた。
3. 咀嚼能力に影響を与える因子として, 永久歯現在歯数, 総咬合力および咬合接触面積との関連性が示唆された。
4. 本研究の結果から, 学齢期における食生活指導を行う際には, 咀嚼能力の発達に考慮した指導内容とする必要性が示唆された。

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