日本小児臨床薬理学会雑誌
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ピロホスファターゼ1は神経細胞分化を調節する
手塚 優多田 有花西郡 秀夫三部 篤
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2012 年 25 巻 1 号 p. 72-76

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抄録
【目的】ピロホスファターゼ(Inorganic pyrophosphatase 1:PPA1)は,生体内にあるピロリン酸をリン酸に分解する酵素として知られている。しかし,その詳細な機能は分かっていない。本研究では,神経細胞の成長・分化におけるPPA1の役割について検討を行った。【方法】神経細胞の分化の評価は,マウス神経芽腫由来細胞(N1E115細胞)を用い,細胞から伸張する神経突起の形態を観察し,解析した。N1E115細胞の分化に対するPPA1の影響を検討するために,PPA1の発現を特異的に抑制するsi-RNAを作製した(si-PPA1)。一方,PPA1遺伝子が過剰に発現したときの影響を検討するため,アデノウイルスベクターにPPA1遺伝子を組み込み(AD-PPA1),N1E115細胞に過剰発現させた。Si-PPA1及びAD-PPA1によるPPA1発現量の変化は,PCR法及びウエスタンブロット法(WB)を用 いて確認した。【結果】si-PPA1を導入したN1E115細胞では,PCR及びWBによりバンドの消失が確認され,PPA1の発現抑制が認められた。AD-PPA1を用いたN1E115細胞では,PCR及びWBにより,PPA1の発現量増加が認められた。si-PPA1によりN1E115細胞のPPA1の発現を抑制した結果,このN1E115細胞は神経様細胞に分化し,軸索状の突起伸張が観察された。この突起は神経細胞のマーカーであるMAP抗体陽性であった。神経分化誘導物質であるバルプロ酸(最終濃度1mM)を添加し,神経様細胞の分化を促したN1E115細胞に,AD-PPA1を導入した結果,N1E115細胞からの軸索状の突起発現は抑制され,神経様細胞分化が阻害されることが観察された。【まとめ】本研究の結果,PPA1は神経細胞の分化誘導を抑 制する因子の一つであると考えられた。
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© 2012 日本小児臨床薬理学会
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