2026 年 36 巻 p. 19-31
山形県上山市川口地区では2018年以降,廃棄物発電能力を備えたエネルギー回収施設川口が稼働し,農作物への影響と人体への健康被害が懸念されていた。廃棄物処理による排出が懸念される化学物質の1つとして,微量元素に着目し,周辺環境の無機試料の33元素濃度分析を実施した結果,Co,Ni,Cu,Zn,As,CdとPbの濃縮係数(EF値)が人為的に強い汚染を示す数値にあることが明らかとされた。また,当該施設から東方方向への拡散,とくに 1.7 kmから 3.0 km地点にはホットスポットの形成が示唆され,調査地域の主要風向である西風と周囲を山に囲まれた地形によるダウンドラフト現象による影響が想定された。また,As,HgおよびPbに関しては当該施設からの直線距離に応じて,EF値が減少する距離減衰傾向を示した。これらの汚染が懸念される元素と拡散状況の傾向は欧州の類似施設周辺における化学物質汚染状況と類似しており,当該施設の稼働が周辺環境への微量元素負荷要因の1つであることが想定された。廃棄物発電施設の適切かつ安全な運用と周辺環境保全を共に実現するためにも,市民および施設関係機関の連携調査や廃棄物発電に関する技術革新にむけた研究が必要とされよう。