抄録
白色腐朽菌 (Phanerocheate chrysosporium) の酵素活性発現特性および物質分解特性について検討した。実験は, グルコースおよび酒石酸アンモニウムなどを主成分とするBasal III培地を用いて, 様々な環境条件を設定して行った。リグニンペルオキシダーゼ (LiP) 活性の発現は, 培地のC/N比条件の影響を受けたが, それ以上にリグニン指標物質であるベラトリルアルコールまたは界面活性剤 (Tween-80) の添加が有効に作用した。一方, マンガンペルオキシダーゼ (MnP) 活性においては, C/N比条件の影響が大きいことがわかった。以上の特徴をもつ白色腐朽菌は, 数種の有機塩素化合物および多環芳香族化合物を分解可能であることを実験で明らかにした。この分解能は, 主として白色腐朽菌の酵素活性に由来すると考えられた。しかし, 一部の物質について, LiP活性があまり高くない高窒素条件で分解がかなり進行したことから, LiPおよびMnP以外の分解酵素の存在が示唆された。