迅速で, 簡便な酵母Two-Hybrid Systemによるエストロゲンアッセイ系を, 96ウェルプレート培養法と化学発光レポーター遺伝子測定法を用いることで開発した。開発したアッセイ系はアゴニスト作用を調べるラット肝S9を用いる+S9試験法と-S9試験法, 及びアンタゴニスト作用を調べる試験法から成り立っている。Dextrose添加量を0.2%にした改良SD培地を用いることでバックグランドのβ-ガラクトシダーゼ発現量を大きく押さえることが可能となり, エストロゲン活性の測定感度を高める結果となった。アゴニスト活性は対照の化学発光量に対する試料の化学発光量の比から10倍影響濃度 (EC
x10) を算定して評価した。5種類のステロイドホルモンとdiethylstilbestrolは, -S9試験においていずれも量-反応作用を示し, 最もEC
x10値が低かったのはethynylestradiolの0.085nMであった。+S9試験において, methoxychlorは量―反応性のエストロゲン活性を示し, EC
x10値は3, 000nMであった。本アッセイ系を用いて数種類の化学物質を検討したところ, EC
x10値は
p-
t-octylphenol 67nM,
p-nonylphenol 550nM, bisphenol A 3500nMを, +S9試験ではbenzo (
a) pyrene 1800nM, pyrene 5, 100nM, 及び1-nitropyrene 41, 000nMを示した。
17β-estradiol (b-E2) 活性の50%抑制濃度 (IC
50) を指標とするアンタゴニスト試験において, 4-hydoxy-tamoxifenのIC
50値は2, 400nMを示し, tetrabromobis-phenol A (IC
50; 820nM) 及びpretilachlor (IC
50; 41, 000nM) にアンタゴニスト作用があることが示唆された。
環境水として試験した霞ヶ浦湖水と廃棄物埋立地浸出水の抽出試料は本アッセイ系によりb-E2に換算して数pptレベルでエストロゲン活性 (アゴニスト作用) を検出できることが可能となり, さらに本アッセイ系にマイクロトックス試験を併用することで, 試験管理精度が高まることが示された。
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