環境化学
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有機リン化合物の加水分解に対する反応性に関する理論的研究
岡島 俊哉前川 薫
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2001 年 11 巻 3 号 p. 491-500

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抄録
本研究は, 殺虫剤や農薬の主要成分である有機リン化合物の加水分解に対する反応性を調べたものである。反応の律速段階はリン酸エステル結合へ水分子が求核的に付加する段階であり, この段階の活性化エネルギー (ΔE) を調べることにより加水分解のしやすさが判断できる。
本研究から以下のことが明らかとなった。
(1) P=O二重結合を有する化合物 (phosphate型あるいはthiolate型) の方がP=Sを含む化合物 (thionate型あるいはthiolothionate型) よりもΔEが小さく加水分解されやすい。
(2) 化合物に硫黄 (S) が含まれるとΔEが大きくなる傾向がある。
(3) リンに電子供与性置換基 (Ph基) が結合するとΔEが大きくなる (反応性が低下する) 。
(4) リンに電子求引性置換基 (F) が結合するとΔEが著しく低下する (反応性が増大する) 。
(5) 分子内メチル基転位反応のΔEは加水分解のΔEに比べて大きく, 分子内メチル基転位に起因するリン酸エステル問の相互変換過程 (例えば, thiolate型⇔thionate型) が加水分解過程に影響する可能性は小さいものと考えられる。
このように, 有機リン化合物の加水分解のしやすさはリン酸エステル結合の求核付加反応に対する反応性と密接に関連していることが示唆された。
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© 日本環境化学会
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