本研究は, 都市化した東京地域における水質汚染特に農薬汚染の特徴を明らかにした。二つのバイオアッセイ, 甲殻類のオオミジンコに対する急性遊泳阻害試験とMicrotox試験を用いて, 29河川37地点で河川水の毒性を測定した。これらの試験の結果から, いくつかの河川水にはオオミジンコに急性毒性を示すレベルで, また海洋細菌Photobacteyium phosphoyeumにはそれよりも低い毒性レベルであるが, 毒性を示す物質が残留していることがわかった。これらの河川水を化学分析したところ, 広範囲の河川水で農薬, アンモニア, 陰イオン界面活性剤による汚染が見いだされた。データを解析したところ, 河川水に曝露したオオミジンコで観察された遊泳阻害は有機りん系殺虫剤による汚染が主たる原因であることが分かった。東京地域の河川水での殺虫剤汚染は生態系に悪影響を及ぼすレベルにあることを示す。またオオミジンコを用いた試験での結果から, 河川に近接した田畑やその他の場所での農薬の使用に関心を持つことが重要であることがわかる。河川水についてのMicrotox試験の結果は, 河川水のオオミジンコ試験, 農薬濃度, BOD濃度と一致せず, 毒性原因物質は明らかになっていない。