2003 年 13 巻 2 号 p. 397-407
東京湾の湾奥部において, 底質の柱状試料 (底質コア) を採取し, ポリ塩化ジベンゾp-ジオキシン (PCDDs) , ポリ塩化ジベンゾフラン (PCDFs) , コプラナーポリ塩化ビフェニル (Co-PCBs) からなるダイオキシン類及びポリ塩化ビフェニル (PCBs) の分析を行い, 年代別の濃度分布を検討した。PCBsの濃度は1950年頃から増加し, 国内のPCB製品生産量が最も多かった1970年頃に最大となり, その後, 緩やかな減少を示した。Co-PCBのうち, 燃焼起源とされている異性体の#169, #126についても他の異性体と同じ年代で最大濃度を示した。廃棄物焼却炉排ガス及びPCB製品を含めた主成分分析結果では, 魚類, 水質, 底質等はPCB製品と同じ領域に分布し, 海洋環境におけるCo-PCBのほとんどがPCB製品由来の可能性が高いことが明らかとなった。PCDD/Fsについては, 年代の古い底質コアは, 廃棄物焼却炉排ガスや大気に近いが, 徐々に農薬の影響が強くなり, 1960~70年頃にPCPが, 1982年頃にはCNPの影響が最も強くなり, 使用された除草剤がPCPからCNPへ移り変わる傾向を確認することができた。しかし, 表層においても, 依然としてPCPの影響は強く, 引き続き都内湾へ流入していると考えられる。