ダイオキシン分析過程の中でも, ソックスレー抽出は極めて重要なプロセスである。現在, JISが規定しているダイオキシン類測定には, 抽出操作以降の分析過程での遮光に関する記載がない。本報から, 実験室レベルの照度 (10001x程度) でも, 照明をつけたままソックスレー抽出を行えば, 容易にPCDFsが分解を起こすことが確認された。このことはダイオキシン類測定上, 極めて重要な問題として留意しなければならない。
また, 本報では光・熱の両面から影響評価を行い, PCDFs分解プロファイルについて数的に把握することができた。今回は標準品の添加回収実験であったため, マトリックス成分の影響は考慮していない。飛灰, 土壌・底質等の実試料のソックスレー抽出では多くのマトリックス成分が介在するため, その分解率は低下することが予測される。しかしながら, 分解の可能性は潜在的に残るため, 実務においてもソックスレー抽出中の照明条件, 遮光対策には特に注意を払う必要がある。