環境化学
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Salmonella typhimurium TA102を用いた変異原性試験における前培養条件の影響
東 俊一岸野 令片山 誠二赤堀 幸男松下 秀鶴
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1997 年 7 巻 1 号 p. 61-67

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抄録
Salmonella typhimurium TA102は, 通常の変異原性試験に用いられている他の菌株では検出できない変異原の検出菌株として期待されている。しかし, その取り扱いに難点があり, 自然復帰コロニー数が極めて多く, 研究所問での変異原性の差異が大きい。そこで, TA102を用いる変異原性試験の規格化検討の一助として, その変異原性に及ぼす前培養時間の検討と, 前培養によって得た菌液の試験開始までの時間の変異原性に及ぼす影響の検討をbleomycin (-S9) , methyl methanesulfonate (-S9) および2-aminoanthracene (+S9) について行なった。
Bleomycinでは, 前培養6時間で最も高い変異原比活性を示し, 前培養9時間の4倍, 前培養16時間の12倍であった。methyl methanesulfonateにおいても, 前培養6時間で最も高い変異原比活性を示し, 前培養9時間の2倍, 前培養16時間の4倍であった。2-aminoanthracene (+S9) では, 前培養6時間以降の培養時間では, 前培養5時間より高い変異原比活性を示した。前培養6時間の菌液において, bleomycinの変異原性は前培養後の放置時間の影響が認められたが, methyl methanesulfonateおよび2-aminoanthraceneでは影響はほとんど認められなかった。
以上のことから, TA102を用いて変異原性試験において高感度かつ良好な再現性を得るためには, 前培養6時間の菌液を用いて, 前培養終了から試験までの時間を短くかつ一定幅の時間に規定する必要があると考えられる。
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© 日本環境化学会
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