2016 年 10 巻 5 号 p. 554-561
症例は72歳女性。50歳代より歯科治療や義歯で口内炎を繰り返す。新たに臼歯の楔状欠損のコンポジットレジン修復と義歯作製を行ったところ, 治療のたびに口内炎を生じ, できた義歯の当たる歯肉, 舌にびらんを生じた。パッチテストにて, methyl methacrylate (MMA) , 2-hydroxyethyl methacrylate (2-HEMA) など5種のメタクリレートに陽性, 義歯の装着は困難となった。27歳の女性歯科医, 47歳の歯科助手はそれぞれ職歴2年および1年半で, 36歳の主婦はジェルネイルを始めて6ヵ月で手指に瘙痒性の紅斑・角化・亀裂を生じ, パッチテストで多数のメタクリレートに陽性となった。いずれの症例も将来歯科治療に困難を生じる可能性がある。歯科患者のメタクリルレジンアレルギーの報告は少なく, 本症の臨床像, 診断法, 対策を述べ, メタクリルレジンを扱うすべての人々に注意を喚起したい。