日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌
Online ISSN : 2189-7085
Print ISSN : 1882-0123
10 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 尹 浩信
    2016 年 10 巻 5 号 p. 519-522
    発行日: 2016/10/31
    公開日: 2016/12/01
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     乾癬は難治性疾患であり, 従来の治療では十分な皮疹の改善が認められず, また関節症状を伴う場合, 関節破壊を防ぐこともできなかった。皮膚科医も患者もその状況に甘んじざるを得ない状況が長い年月続いてきたが, 近年生物学的製剤が乾癬に適応され, 状況が一変した。本稿では, 乾癬治療における生物学的製剤の意義について著者の見解を記した。積極的に生物学的製剤を乾癬治療に取り入れて乾癬患者に幸福をもたらすことは, 皮膚科医の使命であると考えられる。

  • 神人 正寿
    2016 年 10 巻 5 号 p. 523-529
    発行日: 2016/10/31
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

     全身性強皮症は, 皮膚をはじめとする全身の臓器に実にさまざまな症状をきたしうるが, それぞれの病態には線維化, 免疫異常, そして血管障害という3要素が複雑に関与している。

     そのうち, 血管病変は本症のごく初期から出現し, 全病期にわたって患者の生活の質に大きく影響する。そのメカニズムの一部は明らかになりつつあるが, いまだ不明の部分が多い。

     本稿では強皮症の血管病変について, 実際の症状とその原因, そして治療についての最近の知見を紹介する。

  • 末木 博彦
    2016 年 10 巻 5 号 p. 530-536
    発行日: 2016/10/31
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル 認証あり

     SJS/TEN の診断基準改訂にあたり, SJS と erythema multiforme (EM) major との鑑別を明確にすること, 全身症状や皮膚症状など臨床症状を詳細に記載すること, 国際基準との整合をはかることを基本方針とし, これまで以上に皮膚科医の診断力が必要な診断基準とすることを目標とした。EM major の説明を加え, SJS との鑑別は病理所見を含む5つの主要項目に加え, 重症感・倦怠感, 治療への反応, 病理組織所見における表皮壊死の程度などを加味して総合的に判断することを追加した。SJS, TEN それぞれの皮膚所見, 全身症状など臨床所見, 病理所見を詳しく記載し, 診断は副所見を十分考慮のうえで主要項目をすべて満たすこと, 一時点ではなく全経過を踏まえて評価, 判断することを明記した。SJS, TEN それぞれの除外診断についても詳しく規定した。今回の改訂により SJS/TEN の診断の正確性向上が期待され, その検証が待たれる。

研究
  • 小澤 麻紀, 鈴木 弘実, 大浪 薫, 沼田 郁子, 鍵本 香子, 浅野 雅之, 相場 節也
    2016 年 10 巻 5 号 p. 537-545
    発行日: 2016/10/31
    公開日: 2016/12/01
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     東北大学病院皮膚科では, 成人アトピー性皮膚炎患者を対象に問診票による生活習慣および薬物療法における問題点の検索を行い, 検出された問題点について指導箋を作成し改善を促す取り組みを実施している。この取り組みを実施した患者31名について介入前後の臨床症状 (SCORAD) およびQOLを比較したところ, いずれも改善がみられた。また, 初回と1年後に実施した2回目の問診結果から, 生活習慣と薬物療法のアドヒアランスを評価し, 症状改善との関連性を検討した。薬物療法のアドヒアランスがよい患者はSCORADと感情のQOL改善度が高く, 外用薬塗布範囲の変化はSCORAD改善度と, 保湿剤塗布範囲の変化は感情のQOL改善度と相関した。一方, 生活習慣のアドヒアランスがよい患者は感情のQOL改善度が高く, 生活習慣の改善は患者の心理面によい影響を与えることが示唆された。

  • 金子 史男, 富樫 亜吏, 野村 絵里香, 中村 晃一郎
    2016 年 10 巻 5 号 p. 546-553
    発行日: 2016/10/31
    公開日: 2016/12/01
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     再発性アフタ (recurrent aphthous stomatitis : RAS) , 若年女性の Lipschütz genital ulceration (GU) , 結節性紅斑 (erythema nodosum : EN) などは Behçet 病 (BD) の近縁とされてきた。BD の診断では非特異的針反応が参考にされる。しかし, その陽性率は時代とともに低下し, われわれの BD22 症例中1例のみが陽性であった。一方, BD は連鎖球菌類に過敏を示し, 口内の常在連鎖球菌を含む自家唾液にも反応することから, 診断への応用可能性を報告してきた。自家唾液反応は19 例 (90.5 %) に反応し, HLA-B51 保有者は強く反応したが, 活動期患者ではさらに強く, 10 mm 以上の紅斑を示した。他方, RAS と GU は HSV, EBV 感染関与が疑われているが, 自家唾液反応結果は RAS 6例中4例 (67%) と GU 患者1例にも弱い反応を示した。血清検査では RAS の HSV 抗体は陰性, GU の病変部の EBV も陰性であった。唾液反応はEN患者, 健常コントロールは陰性であった。

     以上から自家唾液反応は BD に比べて RAS と GU は弱いが反応していることから, その発症に連鎖球菌がなんらかの役目を演じていると思われた。

症例
  • -歯科従事者の2例, ジェルネイルによる1例も合わせて報告-
    生野 麻美子, 安藤 一郎
    2016 年 10 巻 5 号 p. 554-561
    発行日: 2016/10/31
    公開日: 2016/12/01
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     症例は72歳女性。50歳代より歯科治療や義歯で口内炎を繰り返す。新たに臼歯の楔状欠損のコンポジットレジン修復と義歯作製を行ったところ, 治療のたびに口内炎を生じ, できた義歯の当たる歯肉, 舌にびらんを生じた。パッチテストにて, methyl methacrylate (MMA) , 2-hydroxyethyl methacrylate (2-HEMA) など5種のメタクリレートに陽性, 義歯の装着は困難となった。27歳の女性歯科医, 47歳の歯科助手はそれぞれ職歴2年および1年半で, 36歳の主婦はジェルネイルを始めて6ヵ月で手指に瘙痒性の紅斑・角化・亀裂を生じ, パッチテストで多数のメタクリレートに陽性となった。いずれの症例も将来歯科治療に困難を生じる可能性がある。歯科患者のメタクリルレジンアレルギーの報告は少なく, 本症の臨床像, 診断法, 対策を述べ, メタクリルレジンを扱うすべての人々に注意を喚起したい。

  • ~感作物質をゴム加硫促進剤ジエチルチオウレアの分解産物エチルイソチオシアネートと考えた1例~
    飯島 茂子, 小城 一見, 高山 典子, 石井 恭子, 佐々木 和実
    2016 年 10 巻 5 号 p. 562-568
    発行日: 2016/10/31
    公開日: 2016/12/01
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     34歳女。美容器具「サウナマスク」を顔面に夜1時間装着した翌日より, 装着した部位に一致して落屑を伴う浸潤性紅斑が出現した。種々のパッチテストのなかで, サウナマスクas is, クロロプレンゴム製の中生地を半分に裂いたもので陽性となった。サウナマスクの使用を中止して治療をしたところ順調に回復したが, 汗をかいた後などに再燃を繰り返した。サウナマスクの成分分析で検出された化学物質のうち, チオウレア系加硫促進剤であるジエチルチオウレアでパッチテストが陽性となった。さらにその分解産物エチルイソチオシアネートでも陽性であった。文献的にジエチルチオウレアは非感作性物質, エチルイソチオシアネートが極強度感作性物質であることから, 原因物質はジエチルチオウレア, 感作物質はその体温での分解産物エチルイソチオシアネートと推測した。自験例は感作物質まで追究した初めての報告である。

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