2023 年 35 巻 1 号 p. 27-33
【目的】リング型創外固定は,低侵襲で強固な固定力をもち,変形矯正,感染性偽関節や骨髄炎のみでなく,複雑な骨折に対しても広く利用されている.しかし,リング型創外固定の装着期間は疾患により長期となるため,ピン周囲感染は無視できない合併症である.本研究ではピン周囲感染の傾向を調査し関連する因子を検討した.【方法】対象は2016年4月から2022年4月までで,変性疾患および骨接合術にリング型創外固定を装着し,抜釘までフォローできた30例とした.感染性偽関節,開放骨折などは除外した.平均年齢は66歳で足関節骨折が8例,下腿骨骨折3例,変形性足関節症16例,足関節不安定症1例,尖足2例であった.手術は骨接合術11例,骨切り術9例,関節固定術8例,矯正術2例を施行しており,抜釘までの期間は平均125日であった.後ろ向きに患者背景,ピン周囲感染の部位,重症度を調査し統計学的検討を行った.【結果】ピン周囲感染は21例(70%)に見られ,術後初回感染までは平均25.4日であった.重症度はChecketts-Otterburn grade分類を用いて評価し,I:4例,II:3例,III:9例,IV:5例,V:0例であった.Grade III以上を重症としたとき重症例は14例で,変性疾患およびそれに対する骨切り術,関節固定術で有意に重症例が多かった(P<0.05).糖尿病やステロイド内服などの易感染性宿主や喫煙歴,肥満などの患者背景と感染率,重症化率との関連は示せなかった.ピン周囲感染が発生した部位は下腿遠位と踵骨を併せた関節周囲で22例中12例(55%)を占めた.【考察】ピン周囲感染は創外固定において高頻度に発生するが,その予防法に対するプロトコルは確立していない.本研究ではピン周囲感染の発生には関節周囲のピンが重症化には変性疾患および手術様式がともに関連すると考えられた.今後も関連する因子を検討していくことで感染予防につなげていきたい.