2016 年 23 巻 2 号 p. 166-168
緒言:関節近傍骨折変形治癒後の再骨折は,特に治療歴が明らかでない場合,術前の単純X線だけで見抜くことは困難である.今回,術中に初めて変形治癒に気付いた上腕骨通顆骨折の再骨折症例を経験したので報告する.
症例:85歳,男性.転倒して受傷.単純X線にて上腕骨通顆骨折と診断し,観血的整復術を施行した.上腕三頭筋の両側より進入して整復後,鋼線で仮固定してX線透視で確認したところ,変形治癒後の再骨折であったことに初めて気付いた.整復位で外側はプレート固定,内側は螺子固定を施行した.アルツハイマー型認知症の本人だけでなく,その家族からも患者の骨折治療歴についての情報は術後も得られなかった.
考察:上腕骨通顆骨折の遠位骨片は小さく複雑な形状をしており,受傷後の単純X線像より変形治癒後の再骨折であることを予め想定することは困難であった.本症例では骨癒合を優先し,変形を残したまま整復位で可及的強固に内固定した.