2016 年 23 巻 2 号 p. 219-221
肘頭骨折Colton分類2cまでの症例で高度転位,粉砕,骨粗鬆症,小さい近位骨片を認める症例に引き寄せ鋼線締結法と8の字鋼線締結法の併用療法を施行し,良好な成績が得られた.対象は14例14肘,年齢は63.3歳,経過観察期間7か月であった.骨癒合の有無,手術時間,術後合併症,最終関節可動域,JOA-JES scoreを検討した.全例で骨癒合を認めた.平均手術時間は54分,再転位・内固定材料の逸脱・折損は認めなかった.最終関節可動域は屈曲132度,伸展-4度,JOA-JES scoreは95点であった.本法は①術中骨折・整復不良の防止,②骨把持鉗子の干渉なく整復しながら透視下にピンが刺入可能,③骨粗鬆症例・骨折型によって通常の引き寄せ鋼線締結法のみでは十分な固定性が得られない場合の固定力の補強が可能である.高度転位,粉砕,骨粗鬆症,小さい近位骨片を認める肘頭骨折では,本法は有用な術式と考える.