日本肘関節学会雑誌
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Ⅱ.筋・腱・靱帯
遠位上腕二頭筋腱部分断裂の1例
筒井 求伊藤 岳史花村 浩克
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2016 年 23 巻 2 号 p. 31-34

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抄録

 症例は58歳男性である.荷物を運搬中に左肘違和感が出現した.数日後,荷物を下ろす際に左肘に轢音を感じて以来,運搬作業時の肘痛,脱力感が続いた.肘関節に可動域制限はなく,肘窩に圧痛を認め,屈曲・回外筋力は低下していた.Hook testは陰性,biceps squeeze testは陽性であった.単純X線画像で橈骨粗面に骨棘を,単純MRIで遠位上腕二頭筋腱周囲に浮腫を認めた.手術時,肘屈側を展開すると,腱は2分されており,後方の腱が橈骨粗面停止部で断裂していた.腱断端をsuture anchorで橈骨粗面に縫着した.術後3か月で原職復帰し,術後2年経過時,屈曲・回外筋力は改善し作業動作に支障はない.

 遠位上腕二頭筋腱は長頭,短頭に分かれ,それぞれ主に回外,屈曲機能を担うといわれている.腱の緊張が保たれる部分断裂の診断は難渋するが,自験例ではbiceps squeeze testが有用であった.

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© 2016 日本肘関節学会
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