2017 年 24 巻 2 号 p. 152-154
目的:稀な上腕骨小頭骨折を伴った肘関節側方脱臼1例を経験したので報告する.
症例:78歳,男性.路上で転倒した際に左手をついて受傷した.単純X線像では肘関節側方脱臼と上腕骨小頭粉砕骨折・上腕骨外側側副靱帯剥離骨折と肘頭部剥離骨折を認めた.全身麻酔下に肘関節を90度屈曲位で牽引し回外することで鈍い軋轢音と共に整復できた.上腕骨小頭骨片・上腕骨外側側副靱帯剥離骨片の骨接合術と内側側副靱帯の修復術を施行した.術後9日目より外固定を解除し可動域訓練を開始した.
結果:術後8か月で疼痛は認めず,肘関節は伸展-30度,屈曲120度で,回内外に健患差はなかった.単純X線像では小頭骨折部は骨癒合し,異所性骨化などの合併症はなかった.
考察:肘関節側方脱臼では前腕を回外し肘頭を誘導することで整復するとの報告が多いが,本例では上腕骨小頭が側方に転位し肘頭が上腕骨外側顆に噛み込むように転位していたため,屈曲位での牽引が有効であった.