2017 年 24 巻 2 号 p. 163-165
今回,著者らは肘関節後内側に逸脱する滑膜ひだによる弾発肘の1例を経験した.症例は16歳男性,小学2年時から野球を始めており内野手であった.2か月ほど前から明らかな誘因なく,投球動作時の疼痛と,日常生活で肘を完全伸展する際に弾発感を自覚するようになった.症状が改善しないため手術目的で当科を紹介受診した.初診時,肘関節屈曲10度から完全伸展する際に,肘関節内側に疼痛を伴う弾発現象を認めた.手術所見では,肥厚し腫瘤様となった滑膜ひだが,肘完全伸展時にのみ肘頭窩から後内側に押し出される様に逸脱していた.この滑膜ひだを切除したところ,弾発現象は消失した.術後9か月にて弾発現象の再発はなく,野球に完全復帰している.肘関節内側に生じる弾発肘の原因としては,尺骨神経脱臼や上腕三頭筋の異常に伴うものが報告されているが,滑膜ひだによる弾発肘はまれである.その成因等について若干の考察を加えて報告した.