日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
Print ISSN : 1349-7324
II.成人骨折・脱臼
乳がん多発骨転移後長期生存例に生じた難治性尺骨近位非定型骨折後偽関節
太田 壮一池口 良輔織田 宏基淘江 宏文
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2017 年 24 巻 2 号 p. 166-168

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抄録

 乳癌多発骨転移に対してゾレンドロン酸を長期投与された症例に生じ,治療に難渋した尺骨近位非定型骨折後偽関節の1例を報告する.

 65歳,女性.多発骨転移に対し,ゾレンドロン酸を8年間毎月投与されていた.机で左肘を打撲後,尺骨近位端骨折を生じ,保存的に治療したが,徐々に転位が生じてきた.そのため,同側の橈骨遠位背側より後骨間動脈を血管茎とした血管柄付き骨移植を施行,プレート固定した.4か月後外固定を除去したが,その1か月後にプレートが偽関節部で折損した.再手術は,左腸骨稜から遊離骨移植し,再プレート固定した.再手術後1年半経過したが,現在も装具を常時装着している.左肘の屈伸可動域は,10度~135度,回内80度,回外85度で疼痛なく,装具装着による煩わしさ以外にADL上支障はない.ゾレンドロン酸の長期投与は,骨代謝を著しく抑制する.そのような状況下では,保存的治療は無効で,偽関節に対する血管柄付き骨移植も骨癒合に有利とは言えなかった.今後の症例の蓄積による治療法のさらなる検討が必要と考える.

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© 2017 日本肘関節学会
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