2017 年 24 巻 2 号 p. 283-285
右第2中手骨疲労骨折の既往がある高校生女子テニス選手が約6週間前に誘因なく右肘痛が発生し,痛み増強傾向との訴えにて当科初診.上腕骨内側上顆に軽度の圧痛を認めた.僅かに過伸展痛認めたが,可動域は左右差なく,徒手的不安定性もなかった.MRI検査にて,上腕骨遠位の骨髄にT1強調像およびプロトン濃度脂肪抑制像にて輝度変化を認めた.Arendt分類のgrade 2ないしgrade 3疲労骨折と診断,プレー中止を指示した.11日後には痛みの軽減を認め,CTにても明らかな骨折線を認めなかったので,自覚的に3割程度の内容でプレーを再開させた.4週間後の単純X線像にて上腕骨遠位部前面に仮骨形成を認めた.その後は徐々に運動強度をあげ,8.5週で完全復帰することができた.上腕骨遠位部の疲労骨折は稀であるが,テニス選手には少なからず認められる.本症例ではMRIによりstress reactionの段階で早期に診断でき,短期間の安静を設けることにより早期の競技復帰が可能となったと考えられた.