日本肘関節学会雑誌
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Print ISSN : 1349-7324
VII.神経
血友病性肘関節症に合併した肘部管症候群2例の検討
永井 太朗西田 淳依藤 麻紀子立岩 俊之山本 謙吾
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2017 年 24 巻 2 号 p. 334-337

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抄録

 血友病性関節症は関節内出血を繰り返し,関節症性変化を引き起こすが,肘部管症候群を合併した報告は少ない.われわれは,血友病性肘関節症に肘部管症候群を合併した2例を経験したので報告する.症例は2例とも50歳台男性の血友病A患者で,20年以上前から血友病性肘関節症と診断されていた.肘部管症候群と診断し,尺骨神経皮下前方移行術を施行した.症例1では関節症変化に伴う拘縮を認め,術中所見では尺骨神経溝内にガングリオンと骨棘の増成を認めた.症例2では可動域制限は軽度であったが,尺骨神経溝に骨棘の増成を認めた.両例ともに術直後から症状の改善を認めた.血友病性関節症では肘部管症候群の合併は少ないとされ,渉猟し得た範囲では本邦で1例,海外で7例の報告を認めるのみである.今回の2例から血友病性肘関節症においては,尺骨神経溝の狭小化や動的因子の残存が肘部管症候群併発のリスクとなることが示唆された.

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© 2017 日本肘関節学会
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