2017 年 24 巻 2 号 p. 98-100
先天性橈尺骨癒合症は橈尺骨の分化障害であり,幼少期の前腕回旋障害を主訴に診断されることが多い.しかし今回,比較的年長となってから肘関節ロッキングを契機に診断された症例を経験した.症例は14歳の男児で,左肘関節を深屈曲した際にロッキングを生じ,他院で静脈麻酔下に解除された際,橈尺骨近位部の骨性癒合を指摘された.その後も同様のロッキングを繰り返したため,精査加療目的に当科へ紹介された.左前腕は約10°の回内位強直で,画像上,橈骨頭の前方脱臼を伴う橈尺骨癒合を認めた.頻回のロッキングに対する恐怖心のため,肘関節自動屈曲可動域は90°に制限されており,全身麻酔下に手術を施行した.直視下に確認すると,ロッキングの原因は輪状靱帯による橈骨頚部の絞扼であり,他動伸展時には強い弾発を生じてロッキングが解除された.輪状靱帯を部分切除することでロッキングは完全に消失した.