2018 年 25 巻 2 号 p. 213-215
野球の現場では握り動作で小指屈曲制限のある選手がいる.本研究は,投球時の肘痛と小指屈曲機能の関係の分析を目的とした.肘痛の既往のある高校野球選手32名を肘痛既往群,既往のない選手31名を対照群とした.握り動作を手部内側より撮影した.解析ソフトで小指のMP関節,PIP関節およびDIP関節の屈曲角度の総和を算出し,投球側の総和と非投球側の総和の差(両側差)も算出し,投球側と非投球側の差と両群間の両側差を統計学的に分析した.肘痛既往群の投球側の総和は263±15度,非投球側は271±14度で,投球側が有意に小さかった.対照群の投球側272±13度,非投球側263±11度で,投球側が有意に大きかった.両側差は肘痛既往群-8±8度,対照群9±8度で有意差があった.肘痛既往群の投球側小指には屈曲運動制限があり,これは投球の繰り返しに伴う屈筋の機能低下を示唆していると考える.