2018 年 25 巻 2 号 p. 96-99
緒言:骨パジェット病は本邦ではまれであり,罹患骨も上腕骨は低頻度である.骨パジェット病に生じた上腕骨通顆骨折に対し骨折観血的手術を施行し骨癒合を得られた1例を報告する.
症例:90歳男性.転倒し受傷,X線写真およびCT上,上腕骨での骨透亮像と硬化像の混在と上腕骨通顆骨折を認めた.血液検査ではALP高値,骨シンチにて右上腕骨および右腸骨に異常集積を認め,骨パジェット病が疑われた.高齢でもあり保存的治療を試みたが経過中転位したため手術を施行,大きな展開を避け,十分な硬度の骨質であったためscrew固定した.術中採取骨の病理検査にて骨パジェット病と確定診断し,デノスマブを投与した.術後1年時骨癒合,関節可動域ともに良好である.
考察:骨パジェット病は骨代謝異常により骨脆弱性をもたらす.罹患骨骨折では,保存治療で骨癒合を得られた報告がある一方,偽関節や再骨折の報告もあり治療には注意を要する.