抄録
肘関節脱臼に伴う上腕筋断裂の2例を報告する.症例1は31歳男性,スケートボードで転倒し,左肘に脱臼感があり自己整復後に当科受診した. MRI にて内外側側副靭帯損傷と上腕筋断裂を認め,内外側の靭帯縫合を行い上腕筋断裂は保存的に加療した.最終調査時,疼痛,可動域制限はなく JOA スコア 100 点であった.症例2は14歳女性,ソフトボール中に転倒して受傷した.左肘関節後方脱臼の診断で徒手整復後に当科紹介となった. MRI にて内側側副靭帯断裂と上腕筋断裂を認め,靭帯縫合術を行い上腕筋断裂は保存的に加療した.最終調査時,疼痛や可動域の制限はなく,JOA スコア 100 点であった.上腕筋は肘関節のすぐ前面に位置し脱臼時に損傷するリスクがあり,脱臼時は上腕筋断裂の可能性を考慮する必要がある.本損傷に対し靭帯修復術と上腕筋断裂は保存加療を行い良好な成績が得られ,有効な治療法であると考えた.