抄録
遠位上腕二頭筋腱断裂は高齢女性においては不全断裂を生じて肘窩部の遷延する疼痛が特徴であるが,筋力低下は問題とならない事が多い.そこでわれわれは,遠位上腕二頭筋腱部分断裂を受傷した高齢女性に対して、早期の除痛を目的とした腱切除術を行いその治療成績を検討した.対象は女性3例(76,76,83歳),肘周囲の遷延する強い疼痛を主訴に受診した.MRIでは橈骨粗面における上腕二頭筋腱の信号変化を認めた.手術では橈骨粗面における遠位上腕二頭筋腱の部分断裂を確認し,腱付着部を切除した.術後は制限を行わず疼痛は自制内の範囲で可動域訓練を行った.術後早期に疼痛は改善しており,筋力低下を自覚している症例はなかった.また,術後平均6週以内で日常生活復帰を果たしたことから,遠位上腕二頭筋腱部分断裂を受傷した高齢女性に対しては,腱切除術を選択肢の一つとして考慮して良いと考えた.