日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
Print ISSN : 1349-7324
Ⅲ. 外傷・外傷合併症
上腕骨通顆骨折後に生じた亜急性前腕コンパートメント症候群の1例
樋口 史典高木 陽平土山 耕南藤岡 宏幸
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2022 年 29 巻 2 号 p. 135-139

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抄録

 コンパートメント症候群は外傷に伴って急性発症することが多い.症例は70歳,女性で既往に慢性腎不全で維持透析導入中だった.転倒後右肘の疼痛,腫脹が出現し当院受診しX線像で右上腕骨通顆骨折と診断された.長上肢ギプス固定,NSAIDSの処方され帰宅.受傷7日目で右前腕の疼痛あり当院救急外来を受診しコンパートメント症候群の診断で同日筋膜切開術を行った.閉創はシューレース法と陰圧閉鎖療法を併用した.最終観察時,骨癒合が得られ右肘関節の可動域制限を認めるが日常生活でき,経過良好である.外傷後に緩徐な経過をたどって発症する前腕コンパートメント症候群の報告は少ない.自験例は骨折の転位が軽度であったが慢性腎不全,抗凝固薬の服用,初診時の鎮痛剤の影響から骨折部の出血が増悪し二次的にコンパートメント症候群を起こしたと考えられた.高齢者では亜急性前腕コンパートメント症候群を生じることがあるので注意を要する.

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© 2022 日本肘関節学会
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