日本肘関節学会雑誌
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Print ISSN : 1349-7324
29 巻, 2 号
日本肘関節学会雑誌
選択された号の論文の72件中1~50を表示しています
Ⅱ. 先天性疾患
  • 宗定 大貴, 小林 由香, 吉田 進二, 池田 全良, 齋藤 育雄, 石井 崇之, 中島 大輔, 渡辺 雅彦
    2022 年 29 巻 2 号 p. 1-4
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     先天性橈尺骨癒合症はまれな疾患であり,その中でも肘関節ロッキングを生じた報告例は少ない.今回,先天性橈尺骨癒合症で水泳中に発生した肘関節ロッキングの1例を経験した.症例は15歳の男児で,小学生の頃に右先天性橈尺骨癒合症と診断されている.今回,水泳中に右肘関節の伸展障害が出現.右肘関節可動域は自動屈曲145°,自動伸展85° に制限されており,他動でも伸展は困難だった.単純X線で橈骨頭の前方脱臼を伴う橈尺骨癒合症を認めた.手術では,橈骨頚部で厚みのある輪状靱帯を認め,切離した.術後3か月で疼痛はなく,ロッキング以前の-40° に改善した.本症例は肘関節の過屈曲肢位により輪状靱帯が橈骨頚部に嵌入し,ロッキングが生じたと考えられ,治療には輪状靱帯の切離が必要であった.
  • 武谷 博明, 林 健太郎, 稲葉 尚人, 阿南 揚子, 江口 佳孝, 高木 岳彦, 関 敦仁
    2022 年 29 巻 2 号 p. 5-8
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】神経線維腫症に併発した生下時からの尺骨偽関節および橈骨頭脱臼の1例を経験したので報告する.【症例】生下時より右前腕変形と体幹にカフェオレ斑を認め,1型神経線維腫症と診断された.生後3か月で当科初診,尺骨が中央で偽関節となり,橈骨頭は前方に脱臼していた.生後1歳10か月まで待機し,橈骨遠位部と尺骨近位部に骨延長器を設置し橈骨頭の引き下げを行った.2歳0か月で橈骨頭が整復できる位置となったために,近位橈尺関節を回旋中間位で腸骨移植と共にone-bone forearm化を施行した.2歳2か月で外固定を除去し,制限なく右上肢の使用を許可した.術後半年現在,肘関節に側方動揺なく,右手を使用して遊んでいる.【まとめ】神経線維腫症に併発した生下時からの尺骨偽関節および橈骨頭脱臼の1例に対して,延長器を用いて橈骨を引き下げた後にone-bone forearm化を行い,安定した関節を獲得できた.
Ⅲ. 外傷・外傷合併症
  • 新倉 路生, 今泉 泰彦
    2022 年 29 巻 2 号 p. 9-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     非定型骨折はビスフォスフォネート製剤(以下BP製剤)長期投与による骨代謝回転低下に,骨へのストレスが加わって起こる疲労骨折であるとされている.大腿骨非定型骨折の報告は多数あるが,尺骨非定型骨折の報告は比較的稀である.今回,ビスフォスフォネート製剤長期投与中に発症した尺骨非定型骨折の1例を経験したので報告する.
  • 鍋島 欣志郎, 山田 俊之, 山口 毅, 宮原 萌, 六角 智之
    2022 年 29 巻 2 号 p. 11-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     小児上腕骨顆上骨折手術に対して伝達麻酔を併用した過去の報告は少ない.当院では2011年より麻酔科医の協力のもと,全身麻酔に伝達麻酔(腕神経叢ブロック鎖骨下アプローチ)を併用することで積極的に日帰り手術を行っている.本研究では2011年4月から2021年10月までに当院を受診した15歳以下の上腕骨顆上骨折を対象とした.除外例17例(開放骨折,顆部粉砕骨折,他部位の合併骨折,同部位の再骨折,亜急性例)を除いた合計245例を検討した.検討項目は年齢,性別,骨折型,血流障害の有無,神経障害の有無,術式,麻酔薬使用量,入院日数,術後合併症の有無とした.術後合併症は嘔吐を5例認めたのみであった.小児上腕骨顆上骨折に対する伝達麻酔併用は有用かつ安全であることが示唆された.日帰り手術を選択肢として提供することで患者本人,家族,また医療従事者の負担の軽減を期待できる.
  • 久島 雄宇, 小畑 亮輔, 黒澤 理人, 種子島 諒時, 黒沼 裕哉, 窪野 はな, 米原 周吾, 伊佐治 雅, 尼子 雅敏, 太田 憲和
    2022 年 29 巻 2 号 p. 15-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】上腕骨顆上骨折における手術体位が治療に及ぼす影響を検討したので報告する.【対象と方法】外側3本クロス法により手術加療を施行した115例を対象とし,仰臥位・腹臥位群に分け,さらに骨折形態別に麻酔・手術時間と合併症(術後神経血管障害,整復不良,再転位,回旋転位,内反肘)の有無について比較した.【結果】麻酔・手術時間に両群で有意差はなく,術後神経血管障害は両群とも生じなかった.術中整復不良例・術後再転位例・回旋転位例は仰臥位群で多い傾向にあったが有意差はなく,内反肘例はGartland3型の仰臥位群で有意に多かった.【考察】Gartland2型で両群の合併症発生率に差はなく,Gartland3型の仰臥位群で整復不良・再転位・回旋転位・内反肘例が多かった.要因として腹臥位では術中透視が見やすく,整復保持が容易な点が考えられた.腹臥位での外側3本刺入法は合併症発生率が低い有用な方法であった.
  • 村岡 辰彦, 二村 謙太郎, 土田 芳彦
    2022 年 29 巻 2 号 p. 21-23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     著者らは転位型の小児上腕骨顆上骨折に対し,遠位骨片の転位方向に注目した「仰臥位整復固定法(以下,本法)」を行っている.本法の手技は以下の3段階である.1.整復:肩関節外転90度,外旋90度することで上腕近位を固定し,遠位骨片の内旋変形を整復.肘屈曲,前腕回内で内反変形を整復(外反変形を整復する場合は前腕回外).2.微調整:経皮的に後方buttress pinを挿入し,伸展変形を整復.その後遺残変形を微調整.3.固定:同肢位のまま,内側小切開で内側上顆に鋼線刺入.肩関節中間位に戻し外側上顆より鋼線刺入し手術終了.本法を用いて治療したGartland type III 小児上腕骨顆上骨折30肢について調査をおこなったが,内旋変形なく,臨床・画像所見ともに良好な成績であった.
  • 足立 拓矢, 川端 確, 森本 友紀子, 高松 聖仁
    2022 年 29 巻 2 号 p. 24-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     当院における小児上腕骨外側顆骨折の手術治療成績を報告する.対象は29例(男児22例,女児7例),平均年齢は6.9歳.骨折型はWadsworth分類II型が20例,III型が9例で,術式は観血的鋼線刺入固定術(ピンニング)が5例,観血的鋼線締結法(TBW)が24例であった.最終観察時のX線学的評価,臨床所見を検討した.魚尾状変形を1例,骨癒合遷延を1例認めたが,最終的には全例で骨癒合が得られ,疼痛や変形の訴えはなかった.Flynnの評価基準によるfunctional factorは,優24例,良4例,可1例,cosmetic factorは優26例,良3例であり,術式に関わらず治療成績は良好であった.TBWは固定力が高く早期の可動域訓練ができ,治療成績の安定した選択しやすい治療法である.ピンニングは抜釘時の入院手術を回避できる利点があり,術中に十分な固定性を確認できれば治療選択に入ると考える.
  • 大谷 慧, 市原 理司, 石井 紗矢佳, 鈴木 雅生, 山本 康弘, 原 章, 石島 旨章
    2022 年 29 巻 2 号 p. 27-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     小児上腕骨外側顆骨折に対して,当院でCannulated screwを用いて治療を行った症例の術後経過について調査した.対象は2015年4月から2021年6月までに治療を行い,6か月以上経過観察可能であった16例とした.平均年齢5.8歳,男児11例,女児5例,平均手術待機期間は1.6日,骨折型はMilch分類で全例type II,抜釘時期は平均16.8週であった.術後平均肘関節可動域は屈曲135°,伸展0°.単純X線でのパラメータ評価の平均は全て正常範囲内で,Flynnの評価基準で8割以上の症例がfair以上であった.1例に魚尾変形を伴う偽関節を認め,その他の症例では内外反変形や骨端線早期閉鎖は認めず,比較的良好な経過が得られた.Cannulated screwを用いた固定を行う際には骨折の良好な整復と骨端線に配慮した手技が重要である.
  • 藍澤 一穂, 長谷川 和重, 林 耕宇, 宮坂 芳典
    2022 年 29 巻 2 号 p. 30-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     肘関節脱臼を伴った小児上腕骨外側顆骨折を2例経験したので報告する.症例1:7歳男児.転倒受傷し,同日右上腕骨顆上骨折として紹介され,受傷翌日に観血的整復固定術を行った.術後3週から可動域訓練を開始し,術後3か月で抜釘した.術後3年の最終経過観察時,肘関節可動域0~130度,外反10度であった.症例2:9歳男児.木登り中に転落し受傷.受傷3日後に左肘関節脱臼として紹介され,受傷5日目に観血的整復固定術を行った.術後3週から可動域訓練を開始し,術後6か月で抜釘した.術後9か月で肘関節可動域は0~130度である.2例とも肘関節後内側脱臼にMilchⅡ型の上腕骨外側顆骨折を伴っていた.肘関節脱臼を伴う小児上腕骨外側顆骨折は比較的年長児に多い.単純X線だけではなくMRIや関節造影が診断に有用で,遠位骨端線離開との鑑別が重要となる.自験例2例では早期に観血的治療を行い,良好な成績を得た.
  • 山田 哲也
    2022 年 29 巻 2 号 p. 34-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     小児肘関節脱臼に合併する尺骨鉤状突起骨折の報告は少なく手術適応は明らかでない.さらに上腕骨外側顆骨折や外側上顆骨折を合併した症例について受傷機転と治療を考察する.症例1:4歳男児.滑り台から転落受傷.Milch 1の上腕骨外側顆骨折に肘関節の後内側脱臼と尺骨鉤状突起骨折を合併した.骨折型から後内側回旋力による脱臼と考えたが外側顆骨折の固定のみで安定した.症例2:12歳男児.サッカーゴールの上から転落受傷.外側上顆骨折に後方脱臼と尺骨鉤状突起骨折を合併した.骨折型から後外側回旋力による脱臼と考えたが外側上顆骨折の固定のみで安定した.自験例の上腕骨外側顆骨折Milch 1,上腕骨外側上顆骨折に肘関節脱臼と尺骨鉤状突起骨折を合併した症例では,外側顆骨折,外側上顆骨折が不安定性の原因であり,その整復固定により肘関節は安定した.小児では小さな尺骨鉤状突起骨折内固定の必要性は比較的低い可能性がある.
  • 山口 桜, 森田 晃造, 梅澤 仁
    2022 年 29 巻 2 号 p. 42-44
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【はじめに】上腕骨内顆骨折は小児の肘関節周辺骨折のうち1-2%以下と稀な外傷である.観血的整復固定術により良好な結果が得られた1例を報告する.【症例】9歳男児.左肘関節伸展位で手をつき受傷,画像所見から Milch typeⅠ,Bensahel type 3 の左上腕骨内顆骨折と診断し,観血的整復固定術を施行した.3週間の外固定の後関節可動域訓練を行い,術後4.5か月で抜釘を行った.初回術後6か月の時点で明らかな変形は認めず関節可動域は0-145度と良好な結果が得られている.【考察】本骨折はSalter-HarrisのⅣ型の成長軟骨板損傷であり変形や機能障害を防ぐためには早期の正確な診断と整復が要求される.本症例では受傷後早期に診断に至り,直視下で確実に骨折部を整復固定することで良好な結果が得られた.今後も成長障害の有無については慎重な経過観察が必要である.
  • 宮原 萌, 山田 俊之, 山口 毅, 鍋島 欣志郎, 六角 智之
    2022 年 29 巻 2 号 p. 45-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     小児におけるtrans olecranon fracture dislocationを経験したので報告する.患者は6歳男児.遊具から転落受傷した.CT,MRIでは尺骨鉤状突起に骨傷はなく,骨軟骨片が骨端線近傍の関節面から肘頭窩へ転位していた.他に合併骨折を認めなかった.手術は内側アプローチにて骨軟骨片の整復とK-wire刺入を行った.術後1か月でギプスとK-wireを抜去した.術後1年で伸展0° 屈曲150° と良好な成績を得た.小児肘頭骨軟骨剥離骨折は稀な外傷である.なかでも本症例は,遊離した骨軟骨片が骨端線近傍の関節面から肘頭窩へ転位しており,MCLの破綻や周囲の合併骨折を認めない点が過去の報告と異なっていた.受傷メカニズムは肘頭関節面が骨端線を中心に一時的にopen book様変形したことが考えられる.内側アプローチは視野が得られやすく有用であった.
  • 花香 恵, 射場 浩介, 齋藤 憲, 高島 健一, 山下 敏彦
    2022 年 29 巻 2 号 p. 48-51
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    病態の確定が困難であった小児橈骨頭亜脱臼の3例の病態と術後成績を検討した.
    【対象と方法】男児2例,女児1例,右2肘,左1肘.2例に患肢への外傷歴があるが,受傷時のX線所見では腕橈関節に異常を認めなかった.症状発症11歳,主訴は全例が肘関節運動時痛であり,屈曲制限を2例に,伸展制限を1例に認めた.後方亜脱臼1肘,前方亜脱臼2肘であった.手術時年齢12歳,術後観察期間15か月であった.
    【結果】尺骨矯正骨切り術2例,橈骨短縮骨切り術1例を施行した.術後全例で疼痛と可動域制限は改善した.1例で術後創部瘢痕に対して皮膚形成術を行った.術前X線では尺骨の短縮2例に,橈骨の短縮と過成長をそれぞれ1例に,尺骨前方骨皮質肥厚を1例に認めた.術後X線では,腕橈関節アライメントは改善していたが,1例で橈骨頭亜脱の残存を認めた.
    【考察】外傷歴のない無症状の小児橈骨頭亜脱臼の症例が存在する可能性が示唆された.
  • 夏目 唯弘, 土橋 皓展, 山田 陽太郎, 野村 貴紀
    2022 年 29 巻 2 号 p. 52-55
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     当院で治療した小児上腕骨遠位部骨折のうち,受傷時の単純X線検査のみでは確定診断に至らず,肘関節造影にて確定診断に至った6例を対象とし,各症例の初期診断,関節造影による確定診断および治療法について調査し,肘関節造影の有用性について検討した.確定診断の内訳は,上腕骨遠位骨端線離開2例,上腕骨内側顆骨折1例,上腕骨内側上顆骨折1例,上腕骨外側顆骨折1例,上腕骨外側顆骨折を伴う肘関節脱臼1例であった.特に2歳未満の上腕骨小頭骨端核が出現していない症例における上腕骨外側顆骨折及び肘関節脱臼と上腕骨遠位骨端線離開および,8歳未満の上腕骨滑車骨端核が出現していない症例における上腕骨内側上顆骨折と上腕骨内側顆骨折のような決して診断を誤ることが許されない症例の鑑別に有用であった.
  • 市原 雄一郎, 岩部 昌平, 大木 聡, 古旗 了伍, 伊藤 恵康, 堀内 行雄
    2022 年 29 巻 2 号 p. 56-61
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     小児肘関節周囲の外傷の画像診断では,Xp後に必要に応じてCTやMRIが追加されるが,診断や治療方針が変更される症例も少なくない.本研究では,追加画像検査として,CTが診断の正答率や治療選択に及ぼす影響を調査し,その有用性について検討した.Xp+CTとXp単独で診断の正答率に有意差はなく,少なくとも診断の段階で積極的にCTを勧める結果にはならなかった.XpやCTで診断に迷う際には,関節造影やMRIを検討すべきである.Xpで診断が正しくても,CT追加で骨折部を詳細に観察すると治療方針,術式が変更される症例があり,CTは治療方針を検討するための判断材料や,手術時の戦略を立てるために有用な可能性がある.全ての検者でCTを追加して正答に至っていないにも関わらず,確信を持って診断している症例が存在した.小児肘関節周囲の外傷の画像診断は,複数人の目を通して,診断,治療方針を慎重に検討する必要がある.
  • 松浦 充洋, 吉田 史郎, 高田 寛史
    2022 年 29 巻 2 号 p. 62-65
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【背景】陳旧性Monteggia骨折は小児期に手術を行うことが多く,適応は受傷後3-4年以内で10-12歳以下とされている.成人期になり症状が増悪する症例は稀である.【対象】小児期より時折亜脱臼を認めるものの経過観察された2症例(どちらもBado分類:I型)で,25歳と45歳であった.術中に創外固定を用いて尺骨矯正骨切り角度を決定しplate固定した.【結果】尺骨側の外科的介入のみで観血的橈骨頭整復術は行わなかった.また再脱臼も認めず,JOA-JES score:平均96点で経過良好であった.【考察】本症例は完全脱臼ではなく亜脱臼の状態であったため尺骨の橈骨切痕は正常で,著明な橈骨頭の肥大も認めなかったため尺骨矯正骨切術のみを行ったが,術中創外固定を用いることで骨間膜の緊張度と橈骨頭の整復度を確認することができ,矯正角度決定に有用であり,術後経過も良好であった.
  • 頭川 峰志, 長田 龍介, 廣川 達郎
    2022 年 29 巻 2 号 p. 66-68
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     3歳女児.遊具より転落し受傷し前医でギプス固定を3週間受けた.ギプス除去後,可動域制限があり当科紹介となった.伸展-10° 屈曲110° 回外90° 回内30° であり屈曲・回内の制限を認めた.X線では転位のない尺骨近位骨折,上腕骨小頭と橈骨頭の不適合が見られたが橈骨頭の骨端核はまだ見られなかった.MRIでは傾斜角75° 転位した橈骨近位骨端線損傷を認めた.変形癒合と考え,家族と相談のうえ経過観察を行った.経時的に可動域は改善し,X線で骨端核は明瞭化,傾斜角の改善を認めた.10歳で疼痛なく伸展0° 屈曲125° 回外90° 回内60° であり日常生活に支障はなく,橈骨頚部の肥厚を認めるが骨頭壊死や骨端線早期閉鎖は生じていない.陳旧例の報告では近位橈尺関節癒合や骨端線早期閉鎖の合併症もあり矯正骨切りを行うかは意見が分かれるが,本例では手術加療の介入も念頭に置き経過観察を行ったが追加手術は要さなかった.
  • 川瀨 大央
    2022 年 29 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     小児上腕骨外側顆骨折の術後感染により小頭骨端核の骨溶解を生じ,2年間の経過観察をし得た1例を経験したので報告する.
     症例:2歳9か月男児.右上腕骨外側顆骨折に対しtension band wiringによる手術を施行した.術後4週で感染を疑い術後6週で抜釘を施行したところ,インプラント周囲の骨溶解を認めデブリドマンを施行した.その2週後に再デブリドマンを施行し抗生剤治療で感染は鎮静化した.外側顆から小頭骨端核に骨欠損を生じたが,感染鎮静化後に骨欠損部および骨端核の再生を認め術後2年3か月現在愁訴なく経過良好である.
     考察:小児上腕骨外側顆骨折の術後感染により外側顆から小頭骨端核の広範囲骨欠損を生じたが,感染鎮静化後に再生を認め成績も良好であった.2回の手術で早期に感染を鎮静化でき成長軟骨・栄養血管の損傷を最低限に抑えられたため,骨端核の再生が可能で術後の成績も良好であったと考える.
  • 山田 唯一, 草野 寛, 堀内 行雄, 伊藤 恵康, 佐藤 和毅
    2022 年 29 巻 2 号 p. 74-77
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】単純性肘関節脱臼に対する治療については未だにコンセンサスが得られていない.我々は積極的に靱帯修復術を行っており,今回その治療成績を報告する.
    【方法】2016年より手術を行った21肘を対象とした.術直前に全身麻酔下で肘内外反ストレステストによる不安定性評価を行い,外側: 16例,内側: 20例,両側: 15例を手術適応とした.3週間固定の後に自動運動を開始した.
    【結果】最終経過観察時のJOA -JES scoreは96.2点であった.平均肘関節可動域は屈曲138°,伸展-2°であった.全例肘関節不安定性は認めず,良好な治療成績が得られた.
    【考察】単純性肘関節脱臼に対する保存療法と手術療法の治療成績には有意差がないとする報告がある一方,保存療法では拘縮や疼痛残存が多いとする報告もある.靭帯修復術の治療成績は良好であり,適応を判断した上での手術療法は非常に有用である.
  • 清水 俊平, 市原 理司, 鈴木 雅生, 石井 紗矢佳, 大谷 慧, 原 章, 石島 旨章
    2022 年 29 巻 2 号 p. 78-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【緒言】偶然撮影された外傷性肘関節脱臼の受傷動画から受傷肢位と損傷形態について検討した1例を報告する.【症例】43歳男性.ブレイブボードから転落し受傷し,肘関節前外側脱臼の診断となった.ストレス撮影で,不安定性があり手術加療とした.術中所見として,肘外側で橈側側副靱帯の部分断裂があり修復した.肘内側ではは前斜走線維,後斜走線維と屈筋群の完全断裂があり修復した.術後3か月時点で日常生活に支障なく経過良好であった.【考察】外傷性肘関節脱臼の中でPLRIは肘関節に軸圧,外旋,屈曲および外反の外力により外側側副靱帯損傷が起こり脱臼するといわれている.自験例では外旋ではなく,強い外反が加わって受傷していた.その受傷肢位はSchreiberらが動画解析から内側支持機構が破綻すると考えていたもので,手術所見とも一致する結果となった.【結語】受傷時の動画を正しく評価することは診断や治療の一助となりうる.
  • 中村 恒一, 磯部 文洋, 宮澤 諒
    2022 年 29 巻 2 号 p. 81-84
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     外傷時のX線画像で橈骨頭脱臼,尺骨頭脱臼を認めた症例を経験したでの報告する.症例は70歳男性.屋根から落下し手をついて受傷.X線画像で右橈骨頭脱臼,尺骨頭脱臼を認めた.橈骨頭のドーム状変形,尺骨の弯曲変形を認めたため,陳旧性橈骨頭脱臼に,骨間膜の破綻と尺骨頭脱臼を生じたものと診断した.人工靱帯による骨間膜の再建,TFCC縫合術を行った.橈骨頭の整復は行わなかった.術後経過は良好である.通常,今回のような受傷機転ではEssex-Lopresti脱臼骨折を呈することが多い.今回,受傷時の橈骨頭の形状,尺骨の弯曲,上腕骨遠位の形状から陳旧性の外傷性橈骨頭脱臼もしくは先天性橈骨頭脱臼がもともとあり,それに手をついたことにより遠位橈尺関節,骨間膜の破綻をきたし,橈骨頭脱臼に尺骨頭脱臼を合併した状態に至ったと考えられる.外傷前には症状が全くなかったことより,骨間膜と遠位橈尺関節の再建のみを行った.
  • 武谷 博明, 鈴木 拓, 木村 洋朗, 佐藤 和毅, 岩本 卓士
    2022 年 29 巻 2 号 p. 85-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】尺骨鉤状突起低形成による後外側不安定性に対して腸骨移植を用いた鉤状突起再建と外側側副靭帯縫合術を行った1例を報告する.
    【症例】13歳,男児.1年前より左肘可動時に違和感が持続するが近医では診断がつかず,改善がないために当院紹介受診となった.肘関節伸展時に脱臼感を認めた.画像所見では,両側尺骨鉤状突起低形成とCTや伸展位での単純X線で左肘関節後方脱臼を認めた.尺骨鉤状突起低形成による後外側不安定性と診断し,腸骨を用いた鉤状突起再建と弛緩した外側側副靭帯を縫縮した. 術後18か月の観察時に再脱臼は認めず,骨癒合も得られ良好な経過であった.
    【考察】鉤状突起低形成を認める症例において,腸骨移植による鉤状突起の再建ならびに外側側副靭帯縫合によって肘関節の安定性が獲得できた. また通常のX線撮影は肘関節屈曲位で施行するため, 本病態を疑った場合は, CTや伸展位のX線が有用であった.
  • 筒井 完明, 稲垣 克記
    2022 年 29 巻 2 号 p. 90-94
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     症例は49歳男性.スノーボード中に転倒し受傷.受傷39日目に当院紹介受診となった.肘関節は脱臼位であり陳旧性肘関節脱臼と診断した.早期手術は困難であったため,受傷から 5.5 か月で手術を行った.手術は後方アプローチで展開し,関節内の瘢痕を切除し観血的整復を行った.整復後,内外側ともに著明な不安定性をきたしたため,内側は靭帯再建を行い,外側側副靭帯は縫合した.早期の可動域訓練のためヒンジ付き創外固定を追加した.術翌日から可動域訓練を開始し,創外固定は術後2週で抜去した.術後1年6か月の最終診察時,痛みや不安定性はなく,肘関節可動域は屈曲140度,伸展-10度,Mayo elbow performance scoreは100pointであった.関節脱臼整復の際に広範な軟部組織の剥離が必要となる当外傷に対し,一期的に靱帯再建術と創外固定を行い肘関節の安定性を得ることで良好な成績を得た.
  • 樽田 大輝, 松田 智, 橋本 瞬, 安川 紗香
    2022 年 29 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     当院での橈骨頭・頚部骨折の治療を後ろ向きに評価し,成績不良因子と内固定材を検討した.2011年1月から2020年12月の手術症例,Mason-Morrey分類 TypeII~IV,20歳以上かつ術後3か月以上観察を行った35例(男16例,女19例,平均年齢47歳)を対象とし,Mason-Morrey分類,合併損傷,固定材料,術後合併症,可動域を調査した.Mason-Morrey分類 TypeIIが18例(51.4%),TypeIII・IVが17例(48.6%).合併損傷は尺骨骨折6例,靭帯損傷7例.全例骨癒合し,偽関節はなかった.異所性骨化9例(26%),後骨間神経麻痺1例が合併し,60歳以上の伸展角度が-11°,60歳未満が2°であった(p < 0.01).異所性骨化(26%)は術後可動域に影響を与えた.粉砕骨折でもスクリューやプレートで強固な内固定が可能であった.
  • 髙田 寛史, 吉田 史郎, 松浦 充洋, 秋吉 寿, 坂井 健介
    2022 年 29 巻 2 号 p. 100-103
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     成人橈骨頭・頚部粉砕骨折に対しての術後成績を報告する.対象は橈骨頭・頚部合併骨折,粉砕の定義は骨片が3つ以上あるものとした.症例は10例であり全例ロッキングプレートで固定した.骨癒合率は70%,最終時平均JOA-JES scoreは87.8点であった.偽関節の2例は,頚部に比較的広範囲な骨欠損を認めたため腸骨海綿骨移植を併用し骨片に対しても比較的良好な固定を行っていたにも関わらず,術後矯正損失やインプラント破損および骨片壊死にまで至っていた.その一方で,類似特徴を示す提示症例には内固定強度維持のために皮質骨付き腸骨海綿骨移植を併用した.結果,骨癒合は遷延していたのものの線維性癒合により矯正損失や骨片壊死は認めず,良好な肘関節機能を保っていた.粉砕例に対して内固定強度を維持することは,矯正損失や骨片壊死予防に重要であり,その工夫として皮質骨付き腸骨海綿骨移植の併用も一選択肢であると考えられた.
  • 日高 典昭, 山中 清孝, 鈴木 啓介, 細見 僚, 新谷 康介
    2022 年 29 巻 2 号 p. 104-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     Kaplan進入法(K法)を用いた橈骨頭骨接合時に発生した後骨間神経(PIN)損傷について報告する.症例1はロードバイクで転倒してterrible triad injury(TTI)を受傷した33歳の男性で,橈骨頭のプレート固定を行ったが術直後からPIN麻痺が出現した. 診査 手術を施行したところ,PINは回外筋入口部付近で断裂しており神経移植を行った.術後2年で総指伸筋,長母指伸筋ともにMMTは5-まで回復した.症例2は42歳の男性で,仕事中に重機から転落しTTIを受傷した.橈骨頭のスクリュー固定を施行したが術後にPIN麻痺が発生した. 診査 手術にて回外筋内での断裂が確認されたため神経移植を行った.術後12か月で総指伸筋,長母指伸筋のMMTはそれぞれ5-,4に回復した.K法にはPIN損傷のリスクがあるため,剥離を遠位に進める場合はPINをあらかじめ同定しておくべきである.
  • 土橋 皓展, 夏目 唯弘, 山田 陽太郎
    2022 年 29 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     橈骨頭・頚部骨折を合併した経肘頭脱臼骨折5例5肘を対象とした.検討項目として,骨折型,治療方法,手術待機期間,観察期間,関節可動域(肘関節屈曲・伸展,前腕回内・回外).JOAスコアを評価した.経肘頭脱臼骨折においてMI分類A-IIが1例,P-IIが4例であった.肘頭骨折に関して全例ロッキングプレートで骨接合を行った.橈骨頭・頚部骨折はMason分類Type2が3例,Type3が2例で,Type2の3例の内1例は骨接合,1例は保存,1例は骨片摘出を行った.Type3の2例は人工橈骨頭置換を行った.平均手術待機期間は13日,平均観察期間は15.8か月,平均関節可動域は肘関節屈曲123° 伸展-16° 前腕回内64° 回外88° であった.平均JOAスコアは79点であった.本骨折での治療として橈骨が先か,尺骨が先かは依然議論の余地はあるが,今回尺骨の再建を優先し手術を行った結果を報告する.
  • 森谷 史朗, 木曽 洋平, 戸谷 祐樹
    2022 年 29 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【症例】52歳,男性.Posterior olecranon fracture-dislocation(M-I分類type P-II)に対して,合併する橈骨頭骨折(Mason分類type III)のプレート骨接合術後,鉤状突起骨折(O'Driscoll分類type 3かつtype 2)および肘頭骨折の治療が行われた.しかし鉤状突起骨折の整復不良,遷延癒合,関節症,異所性骨化,尺骨神経障害,可動域制限など複数の合併症を生じたため追加手術を要した.過去の報告も踏まえ,複合性肘不安定症となる本症においては,橈骨切痕と滑車切痕を形成する鉤状突起基部骨折の解剖学的整復と安定化を最優先する.続いて,合併する橈骨頭・頚部骨折の治療は総手術時間も考慮し,腕橈関節の確実な支持性が得られる再建法を選択する.肘頭骨片の整復・内固定は近位橈尺関節の良好な適合性・安定性が得られたことを直視下に確認した後に行う.
  • 舩本 知里, 太田 壮一, 貝澤 幸俊
    2022 年 29 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     当科で観血的整復固定術を施行し,術後3ヶ月以上経過観察可能であった新鮮尺骨肘頭骨折に対する各術式の治療成績を後ろ向きに比較検討した .対象は,男性21例,女性20例の41例で,K-wireによるTension band wiring(K-TBW)法14例,Ring pinによるTBW法10例,プレート固定17例であった.最終経過観察時の可動域,JOA-JESスコア,骨癒合後の抜釘を除く追加手術の有無を 検討した.最終経過観察時の可動域やJOA-JESスコアでは,術式の違いによる有意差を認めなかった.追加手術は41例中7例(K-TBW 5例,プレート固定2例)で行われ,K-TBW法でやや増加していた.比較的経験の浅い術者が担当することが多いK-TBW法では,K-wireの逸脱を防ぐ工夫など丁寧な手術を徹底する必要があると思われた.
  • 高瀬 史明, 原田 義文
    2022 年 29 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     肘頭骨折のプレート固定術後に,より近位での粉砕骨折をきたしFiber Wire ® を用いてpull-out suture法を行った一例を報告する.68歳女性,転倒による右肘打撲にて受傷.単純X線像で肘頭粉砕骨折を認め,ロッキングプレートを用いて骨接合術を行った.術後27日目,右肘を伸展位の状態で手をつき再度転倒.単純X線像で初回骨折部よりも近位での再骨折を認めた.再受傷後8日目,上腕三頭筋腱にFiber Wire ® を縫合しpull-out suture法にて骨折部を固定した.術後5か月経過時に単純X線像で骨癒合を認めた.肘関節可動域は屈曲120度,伸展-20度であり疼痛はない.骨粗鬆症が明らかな高齢者の肘頭骨折では,術後再骨折発生のリスクがあるため,初回手術時にFiberWire ® などの破断強度の高い縫合糸を用いた補助縫合の追加も考慮する必要があると思われた.
  • 銭谷 俊毅, 齋藤 憲, 射場 浩介, 高島 健一, 山下 敏彦
    2022 年 29 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     上腕二頭筋遠位部断裂は放置すると上腕二頭筋の拘縮や筋力低下を生じる.今回,当科における上腕二頭筋腱遠位部断裂に対する術後成績について報告する.上腕二頭筋遠位部断裂に対し手術加療を行った5例5肘を対象とした.男性4例,女性1例受傷から手術までの待機期間は平均15ヶ月,手術時年齢は平均60歳だった.手術は比較的受傷早期の4例でアンカーを用いた断裂腱の付着部への再縫着を,診断後47ヶ月経過していた1例ではPL腱を用いて補強し,再縫着を行った.JOAスコアも術前平均72/100から94/100となった.また,1例で術後4年経過後に上腕二頭筋腱縫着部周囲の滑膜炎で再手術を要した.上腕二頭筋遠位部断裂に対する手術療法と臨床成績に対して検討した.1 例で縫着部位の滑膜炎による再手術を認めたが,手術療法により疼痛,筋力,可動域は改善を示した.
  • 荻原 陽, 川野 健一, 東山 祐介, 稲垣 克記
    2022 年 29 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     遠位上腕二頭筋腱断裂は比較的稀な疾患であり,その陳旧例はさらに稀である.腱再建で,自家腱の移植を行う方法が報告されているが,使用する移植腱については様々な報告がある.我々は,陳旧例に対し,自家移植腱として同一肢の上腕三頭筋腱を使用した症例を経験したので報告する.症例は48歳男性.建築作業中,右肘関節周囲に亀裂音を伴う疼痛を自覚.肘の曲げにくさを自覚し,近医を受診.精査加療目的に当院を紹介受診.回外筋力の低下,フックテスト陽性を認め,画像精査で,遠位上腕二頭筋腱断裂の診断.受傷後32日に腱再建術を行った.手術は,肘関節前方皮切で遠位上腕二頭筋腱の断裂を確認.上腕後方皮切で,上腕三頭筋腱を採取し,断裂した遠位上腕二頭筋腱を再建.術後6ヶ月で良好な機能回復を得た.同一肢の上腕三頭筋腱を使用し,良好な成績を得た.陳旧性遠位上腕二頭筋腱断裂に対し,上腕三頭筋腱が移植腱の選択肢となりうる.
  • 樋口 史典, 高木 陽平, 土山 耕南, 藤岡 宏幸
    2022 年 29 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     コンパートメント症候群は外傷に伴って急性発症することが多い.症例は70歳,女性で既往に慢性腎不全で維持透析導入中だった.転倒後右肘の疼痛,腫脹が出現し当院受診しX線像で右上腕骨通顆骨折と診断された.長上肢ギプス固定,NSAIDSの処方され帰宅.受傷7日目で右前腕の疼痛あり当院救急外来を受診しコンパートメント症候群の診断で同日筋膜切開術を行った.閉創はシューレース法と陰圧閉鎖療法を併用した.最終観察時,骨癒合が得られ右肘関節の可動域制限を認めるが日常生活でき,経過良好である.外傷後に緩徐な経過をたどって発症する前腕コンパートメント症候群の報告は少ない.自験例は骨折の転位が軽度であったが慢性腎不全,抗凝固薬の服用,初診時の鎮痛剤の影響から骨折部の出血が増悪し二次的にコンパートメント症候群を起こしたと考えられた.高齢者では亜急性前腕コンパートメント症候群を生じることがあるので注意を要する.
  • 川崎 恵吉, 酒井 健, 坂本 和歌子, 筒井 完明, 諸星 明湖, 稲垣 克記
    2022 年 29 巻 2 号 p. 140-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     VA-LCPDHP(Depuy Synthes社)・ALPS Elbow(Zimmer Biomet社)・APTUS Elbow(Medartis社)の3機種のサポート付き後外側用と内側用のプレートを,上腕骨の模擬骨(SAWBONES)に設置し,サポート部,後外側部,内側部のスクリュー孔と高齢者の上腕骨顆部骨折の骨折線の位置との関係を調査した.60歳以上の上腕骨顆部骨折の71例の骨折線は,上腕骨外側上顆部より遠位で,中央より外側に存在することが分かった.3機種のサポート部のスクリュー穴は,上記の骨折線より近位に存在することが判明した.高齢者では上腕骨顆部骨折の外側顆骨片は小さく,各社の後外側プレートのサポート部のスクリュー孔よりも骨折線が近位となることが多いため,外側顆骨片の固定には注意が必要である.
  • 福山 建太朗, 寺浦 英俊, 山本 耕平
    2022 年 29 巻 2 号 p. 143-146
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     ダブルプレート固定法は一般的に固定性に優れるが術後の尺骨神経症状や遠位骨片へのスクリュー挿入不十分による偽関節が報告されている.当院で上腕骨遠位端骨折に対してダブルプレート固定法を施行した14例を対象として治療成績および成績不良因子について検討した.男性5例,女性9例,平均年齢62歳(26-88歳),AO/OTA分類A2:7例,A3:1例,C1:2例,C2:4例であった.全例で骨癒合が得られ,術後合併症はなく,平均肘関節可動域(ROM)は-13~134° ,近位骨片の挿入スクリュー本数は平均6.9本, 遠位骨片は平均5.7本,JOA-JESスコアは平均91.3点,Mayo Elbow Performance Scoreは平均98.2点であった.年齢とROM,JOA-JESスコアに有意に負の相関を認めた(P < 0.05).近位・遠位骨片へ充分にスクリューを挿入することで偽関節が回避でき,尺骨神経は術中に愛護的に扱うことで術後の尺骨神経症状の発生を予防できた.ダブルプレート固定法は有効な治療法と考えるが年齢があがると治療成績が劣った.
  • 葛原 絢花, 関口 昌之, 大日方 嘉行, 辻 健太郎
    2022 年 29 巻 2 号 p. 147-152
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢者の上腕骨遠位部骨折に対して症例を限定して人工肘関節置換術を行っているのでその有用性を検討した.【対象・方法】上腕骨遠位部骨折の症例に対し,人工肘関節全置換術あるいは上腕骨側半人工肘関節置換術を行った5例を対象とした.半人工肘関節置換術では上腕骨コンポーネント設置時に内・外側顆骨片をトリミングしてTension band wiringで固定した.【結果】術後平均観察期間は29カ月と短期ではあるが,平均可動域は伸展-8° ,屈曲131° ,MEPSは94点であった.【考察】高齢者の上腕骨遠位部骨折に対する人工肘関節置換術は術後の早期可動域訓練が可能で,良好な可動域が得られた.当初は半拘束型のシステムで全置換術を用いていたが,現在は橈骨・尺骨に骨折のない症例では,FINE人工肘関節の上腕骨コンポーネントのみを用いて上腕骨側半人工肘関節置換術を施行し,より侵襲の少ない方法で行っている.
  • 入船 秀仁, 蔡 栄浩, 西田 欽也, 上杉 和弘, 前田 明子, 阿久津 祐子
    2022 年 29 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     重度肘関節外傷に対してTEAを行った6例について調査した.男性4例,女性2例,平均年齢47歳で,開放骨折が4例,肘関節切断が2例であった.TEAとした理由は,受傷時の高度骨欠損が2例,経過中に生じた高度不安定性によるものが4例であった.また皮弁移植による軟部組織再建を併用したものは5例あり,うち2例はTEAと同時に軟部組織再建を行っていた.使用した皮弁は有茎広背筋4例,遊離広背筋1例,遊離ALT1例であった.TEA後感染により再置換を行ったものが1例あった.平均52.6ヶ月経過観察を行い,最終観察時肘可動域は伸展-15° ,屈曲133° で,MEPSは平均80.8点であった.重度肘関節外傷に対するTEAおいても,積極的に軟部組織再建を併用する事で満足のいく結果が得られるものと思われた.
  • 白井 久也, 黒川 義隆, 守谷 和樹
    2022 年 29 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】人工肘関節再置換後の上腕骨ステム端骨折に対して,再々置換術,腓骨移植とプレート固定を行った難治例を経験したので報告する.【症例】77歳,男性のRA例.56歳時に前医で左肘にTEAを施行(Kudo-5使用)された.人工関節の破断を生じたため当院で72歳時に再置換術を施行(Discovery人工関節)した.術後経過は良好であったが,77歳にステム上端で骨折を生じた. Discovery ロングステムでの再々置換術と腓骨移植とプレート固定を行った.尺骨は置換しなかった.術後6か月で骨癒合が得られ,左肘痛はなく趣味の畑作業に復帰できた.術後2年の調査時,左肘は伸展-15,屈曲115度であった.【考察】骨欠損が大きく,ロングステムへの再置換術だけでは骨癒合が困難と推測された本例では腓骨移植とプレート固定が有用であった.移植骨とプレートの設置位置とその固定方法など術前計画が大切である.
  • 岩倉 菜穂子, 肥沼 直子, 秋元 理多
    2022 年 29 巻 2 号 p. 162-165
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     人工肘関節置換術後のインプラント周囲骨折は稀であり,患者の多くが関節リウマチであるため骨質の低下や免疫力の低下があること,上肢は下肢に比べて骨が薄く細いことから,治療に難渋する.自験例および過去の文献より,RA患者のTEA術後に起きる,上腕骨骨幹部のインプラント周囲骨折に対する治療成績を検討し,Mayo分類のTypeごとの治療方法について考察した.自験例6例と過去の文献12例から,セメントステムや,セメントレスステムでも転位がある症例は手術適応であり,ステムの弛みのないType II 1はプレート固定,ステムの弛みがあるType II 2,3はステム再置換にプレート固定またはstrut boneの骨移植を併用することが望ましいと考えられた.
Ⅳ. スポーツ障害
  • 伊藤 華奈子, 門間 太輔, 岩本 航, 近藤 英司, 岩崎 倫政
    2022 年 29 巻 2 号 p. 166-169
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     野球選手と体操選手では上腕骨小頭離断性骨軟骨炎の好発部位が異なることが臨床的に報告されているものの,競技の違いが肘関節内応力分布に及ぼす影響はいまだ不明である.本研究ではCT osteoabsorptiometry法を用いて野球選手と体操選手における肘関節応力分布を比較検討した.大学生野球選手12名と体操選手13名の利き腕の肘関節単純CT画像を用いて高骨密度領域を解析した.野球選手と体操選手では平均Hounsfield units(HU値)の分布に違いがみられ,野球選手では投球側の上腕骨小頭前方で平均HU値が有意に高く,体操選手では上腕骨小頭遠位で平均HU値が有意に高かった.野球選手では繰り返す投球動作における上腕骨小頭前方へのストレスにより同部位の平均HU値が上昇し,体操選手では肘伸展位での上肢荷重負荷における上腕骨小頭遠位へのストレスにより同部位の平均HU値が上昇したと推測される.
  • 後藤 英之
    2022 年 29 巻 2 号 p. 170-174
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】大学硬式野球投手の球速と肘関節への力学的負荷との関係を慣性計測装置(加速度センサー)による加速度測定によって調査した.
    【方法と対象】男子大学硬式野球部投手8名,平均年齢19.3歳(19-20)を対象とした.肘関節尺側側副靭帯の方向に加速度センサーを装着し,投球の映像からブルペンでの全力投球10球について,コッキング後期に肘関節内側に負荷される加速度を求めた.
    【結果】球速は平均127.4km/時で肘外反方向への加速度は、平均646.7m/sec2,合成加速度は平均878.6m/sec2,肩-肘角は平均170.7度であった.球速および肘外反方向への加速度との間には有意な相関関係は認められなかった(r=0.08)が,球速と肘関節合成加速度との間には正の相関を認めた(r=0.631).
    【結論】大学硬式野球投手では球速と肘関節合成加速度との間には正の相関が認められた.
  • 佐久間 健太郎, 古島 弘三, 宇良田 大悟, 村山 俊樹, 貝沼 雄太, 川鍋 慧人, 船越 忠直, 草野 寛, 高橋 啓, 下河邊 久雄 ...
    2022 年 29 巻 2 号 p. 175-178
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】連続投球による前腕回内屈筋群の筋疲労と肘関節内側裂隙距離(MJS)との関連を明らかにする.【方法】健常者10名に100球の連続投球させ,投球前と20球ごとに円回内筋(PT),橈側手根屈筋(FCR),尺側手根屈筋(FCU)の最大等尺性収縮時の中間周波数(MF)を求めた.MJSは超音波画像診断装置で測定した. MJS変化率(100球投球後のMJS/投球前のMJS)と各筋のMF変化率(100球投球後のMF/投球前のMF)の相関を求めた.【結果】MJSは投球前と比べ80球以降に開大した.PT,FCUのMFは100球後に減少したが,FCRでは変化しなかった. MJS変化率はPTのMF変化率と負の相関関係を認めた(r=-0.81).【考察】PTとFCUは100球の連続投球後に筋疲労を生じた.PTの筋疲労は肘関節外反不安定性の要因になっている可能性がある.
  • 宮下 浩二, 小山 太郎
    2022 年 29 巻 2 号 p. 179-181
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     肘痛の既往のある選手の小指のMP,PIP,DIPの屈曲角度を分析した.高校野球選手63名を肘痛既往群32名とコントロール群31名とした.握り動作の小指のMP,PIP,DIPの自動屈曲角度を算出した(単位:度).両群とも各角度の投球側と非投球側の差を統計解析した(p < 0.05).肘痛既往群のPIPの自動屈曲角度は投球側が非投球側より4.1° 有意に小さく,MP,DIPでは有意差を認めなかった.コントロール群のDIPの自動屈曲角度は投球側が非投球側より7.6° 有意に大きく,MP,PIPでは有意差を認めなかった.肘痛既往群のPIP自動屈曲角度は投球側が有意に小さいことから,肘外反を制動する浅指屈筋の収縮機能や筋力低下が示唆された.コントロール群のDIP屈曲角度は投球側が有意に大きいことは,健常選手の特徴と考えた.
  • 岩堀 裕介, 伊藤 岳史, 川島 至, 梶田 幸宏
    2022 年 29 巻 2 号 p. 182-185
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     野球選手の肘関節尺側側副靱帯(UCL)損傷に対し,長掌筋腱を用い尺骨・上腕骨の両側をスーチャーアンカーで固定するUCL再建術を行い臨床成績を調査した.対象は全例男性,36例36肘,手術時年齢は平均19.4歳,投手27例,捕手4例,野手5例で,術後経過観察期間は平均18.5ヶ月であった.手術はUCL前方線維上のFDSの剥離とUCLレムナントの尺骨側の剥離を最小限とし,尺骨側は鉤状結節部に1つの浅い骨孔,上腕骨側は内側上顆を貫通する骨孔を空け,両側をスーチャーアンカーで縫着した.全例が平均10.2ヶ月で野球競技復帰を果たし,Conway-Jobe ratingはexcellent:29例,good:5 例,fair:1例であった.JOA-JESスポーツスコアは術前46.1点から術後93.4点に有意に改善した.本法はUCLレムナントを温存でき簡便にUCL再建できる有用な方法と思われた.
  • 山田 唯一, 佐藤 和毅, 木之田 章
    2022 年 29 巻 2 号 p. 186-189
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】われわれは,オーバヘッドアスリートの肘内側側副靱帯損傷の治療として靱帯再建術(伊藤法)を実施している.野球選手に対する本手術法の治療成績を検討した.
    【対象/方法】1998年8月から2019年8月に手術を施行した投手41名を対象とした.手術時平均年齢は18歳であった.競技復帰状況,投球時肘内側部痛の有無,JOA-JES scoreなどを検討した.
    【結果】術後平均経過観察期間は37.6か月であった.全例が野球復帰を果たし,投球再開までの期間は平均6.0か月,試合(実践)復帰までの期間は平均9.8か月であった.復帰レベルの低下を5例に認めた.JOA-JES scoreは術前平均34.1点から術後平均94.1点に改善した.
    【結語】野球選手に対する伊藤法の成績について報告した.5例で野球復帰レベルの低下を認めたが,全例競技復帰を果たし手術成績は概ね良好であった.
  • 根津 智史, 島村 安則, 齋藤 太一, 尾﨑 敏文
    2022 年 29 巻 2 号 p. 190-193
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】transitional typeは移行型とされる骨折型であるが内固定方法には議論の余地がある.本研究の目的はOSFのtransitional typeに対する骨釘固定法の成績と癒合に関連する因子を調査すること.
    【対象と方法】骨釘固定を行った22例の野球選手を対象とした.調査項目は癒合期間,2方向での骨釘固定角度,プレー復帰期間,合併症である.
    【結果】全例男性,手術時平均年齢は15.8歳,癒合期間は平均2.3か月で全例骨癒合が得られた.骨釘固定角度は正面像で83.1度,側面像で78.6度で復帰には平均4.6か月,合併症は術後再発が1例,骨釘の追加処置が1例であった.
    【結語】OSFのtransitional typeに対する骨釘固定術は早期より全例骨癒合が得られた.骨移植に加え適切な骨釘固定角度が良好な成績の要因と考える.
  • 草野 寛, 古島 弘三, 船越 忠直, 伊藤 雄也, 高橋 啓, 宮本 梓, 宇良田 大悟, 井上 彰, 貝沼 雄太, 堀内 行雄, 伊藤 ...
    2022 年 29 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【背景】投球動作のボールリリース以後では前腕は回外位から回内するため,回内位での橈骨頭前方不安定性の存在は上腕骨小頭に剪断力が生じると考えられる.しかし,一般的な単純X線肘側面像は前腕中間位で撮影しているため,橈骨頭と小頭の関係は安定している.本研究の目的は,OCD患者の単純X線側面像(肘90度屈曲回内位撮影)を用いて,橈骨頭亜脱臼がOCDの発生要因になりうるかを検討することである.【方法】2020-21年の期間に受診した11-15歳の31例(OCD群)を対象とし,ontrol群を内側上顆下端障害38例とした.初診時の単純X線側面像(肘90度屈曲回内位撮影)を用いて,橈骨頭の前方不安定性を評価した.【結果】OCD群では亜脱臼は19例, 正常12例であり,Control群では亜脱臼4例, 正常34例であった.OCD群ではcontrol群と比較して亜脱臼例が有意に多かった (P < 0.05).
  • 上原 大志, 堀切 健士, 儀間 朝太
    2022 年 29 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
     進行期OCDに対して肋骨肋軟骨移植術を施行した7例7肘(全例男性の投球側,平均年齢13.8歳)を対象とした.術前画像評価では全例外側壁を含む広範囲型で,術中所見のICRS OCD分類はstage IIIが5肘,IVが2肘であった.手術は病変部を掻爬,母床部を掘削した後,移植骨軟骨片をプレスフィット固定した.平均可動域は術前屈曲115.8° が術後127.5° ,術前伸展-23.3° が術後-7.5° に改善した.肘機能スコアの平均は術前39点が術後91.7点に改善し,全例もとのスポーツに復帰した.術後MRIで全例移植片は癒合したが,1例外傷により移植軟骨片の一部が剥脱した.単純X線で2例に橈骨頭の肥大が軽度進行したが,関節症を認めた症例はなかった.本術式は外側壁を含む広範囲型に対しても術後成績は概ね良好であった.移植軟骨は厚くせず,トリミングにより関節面の形状を正確に形成することが重要と思われた.
  • 三田地 亮, 高原 政利, 佐藤 力
    2022 年 29 巻 2 号 p. 204-208
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】当院における骨軟骨柱移植術の術後成績を調査し,スポーツ復帰後の疼痛を明らかにすること.【対象と方法】本術式を行った80例(全例男性,平均12.6歳)を対象とした.術前肘可動域の平均は屈曲131度,伸展-12度であった.握力の患健比は平均82.6%であった.後療法は術後2週間のギプス固定,3か月でスポーツ開始,6か月で復帰とした.経過観察期間は平均25.1か月であった.スポーツ復帰状況,肘痛再発,肘再手術,最終調査時の肘可動域,握力,および罹患部以外の体の痛みを調査した.【結果】スポーツへの完全復帰は74例であった.不完全復帰の6例のうち4例に再手術が行われた.肘可動域(屈曲135度,伸展-2.5度)と握力(平均99.3%)は術後に有意に改善した.罹患部以外の体の痛みは30例にあり,腰痛10例のうち,完全復帰は5例であった.【考察】 腰痛が競技継続を妨げる要因となることが示唆された.
  • 片山 れな, 高原 政利, 澁谷 純一郎, 高木 理彰
    2022 年 29 巻 2 号 p. 209-213
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/16
    ジャーナル フリー
    【目的】Panner病の2例を経験したので報告する.【症例1】11歳男児.少年野球選手.1か月前に投球後より右肘関節外側痛が出現し受診した.肘関節可動域制限を認め,肘関節X線像では著変を認めなかったが,MRIで信号変化を認めた.Panner病と診断し,シーネ固定 を 7週間 行った.初診から5週後に小頭骨端核全体の圧壊を認めたが,経時的に改善を認め,18か月後に疼痛なく野球に復帰した.【症例2】9歳男児.体操選手.2か月前から体操の支持系動作での右肘関節痛があり受診した.X線では小頭骨端核全体の圧壊を認め,シーネ固定を 5か月間 行った.経時的に改善を認め31か月後に疼痛なく体操に復帰した.【結語】 Panner病の2例について報告した.発症後早期のMRIにて上腕骨小頭骨端核の変化の他に,上腕骨遠位骨幹端外側にT2高信号を認めた.
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