日本肘関節学会雑誌
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Ⅲ. 外傷・外傷合併症
陳旧性経肘頭脱臼骨折の1例
池田 将吾秋田 鐘弼
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2023 年 30 巻 2 号 p. 107-111

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抄録

 肘頭骨折の術後経過中に陳旧性経肘頭脱臼骨折の状態に至った症例を経験したので報告する.患者は46歳男性,高所から転落受傷した.受傷時はX線で肘頭単純骨折がみられるのみであったが,術後感染により,当院受診時にはX線,CTにて肘頭骨折の遷延癒合,経肘頭前方脱臼,腕尺関節の骨欠損が生じていた.採血で軽度の炎症上昇,MRIで関節内の滑膜増生を認めたため,陳旧性経肘頭脱臼骨折の加療に加え感染除外の目的で二期的手術を施行した.一期目手術で瘢痕組織の切除,剥離を行い,脱臼整復位を獲得した状態で,ヒンジ付き創外固定器を設置した.組織培養の陰性確認後,二期目手術で肘頭骨折部の新鮮化,腸骨骨移植による腕尺関節形成,plate固定,ヒンジ付き創外固定器の再設置を行った.術後2週間で創外固定着用下での肘屈伸運動を施行した.術後2か月で創外固定を除去した.術後1年で骨癒合を認め抜釘術を施行した.術後15か月でMayo elbow performance scoreは95点であった.本症例では,ヒンジ付き創外固定器,腕尺関節への腸骨骨移植,plate固定により求心位を比較的維持した状態で骨癒合が得られ,良好な経過を辿った.

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© 2023 日本肘関節学会
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