日本肘関節学会雑誌
Online ISSN : 2434-2262
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最新号
日本肘関節学会雑誌
選択された号の論文の97件中1~50を表示しています
I. 基礎
  • 鈴木 加奈子, 西中 直也
    2023 年 30 巻 2 号 p. 1-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,結帯動作における肘関節屈曲角度と肩関節,肩甲骨,体幹,骨盤角度との関係を左右別に明らかにすることである.健常男性20名を対象に,端座位における左右での結帯動作を三次元動作解析装置で計測した.第8胸椎高位まで結帯動作を行った際の肘関節屈曲角度変化量と,肩関節,肩甲骨,上部体幹,骨盤角度変化量,上肢下垂位での上部体幹,骨盤側方傾斜角度の相関を左右別に検討した.その結果,右側の肘関節屈曲角度変化量は肩関節内旋角度変化量と,左側の肘関節屈曲角度変化量は肩関節伸展角度変化量と相関があり,肘関節屈曲角度と関連のある関節角度は左右で相違があった.左右ともに,肘関節屈曲角度変化量は上肢下垂位での骨盤側方傾斜角度と相関があった.結帯動作時の肘関節屈曲を評価する際には,肘関節のみらならず,肩関節の角度変化,端座位姿勢における骨盤側方傾斜角度に着目した評価が有用になると考える.
Ⅱ. 先天性疾患
Ⅲ. 外傷・外傷合併症
  • 岡部 眞弓, 大村 泰人, 関根 巧也, 上原 浩介, 門野 夕峰
    2023 年 30 巻 2 号 p. 12-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     完全転位型小児上腕骨顆上骨折の手術手技に関するコンセンサスは得られていない.今回,当科の手術手技と成績を報告する.対象は2015年1月から2022年10月までに完全転位伸展型で後述の手技で手術し,術後3か月以上経過観察可能であった22例とした.整復はまず1分間以上牽引し短縮を解除し,次に前腕回内外で側方転位を整復し,最後に肘頭を押し込み肘屈曲させ背屈転位を整復する.手術はまず肘頭外側のsoft spotと外側上顆から鋼線を刺入し,次に肘伸展回内位とし尺骨神経の前方脱臼を防ぎ,内側上顆腹側から鋼線を1本刺入する.結果は手術時間の中央値は15.5分,Flynnの評価ではexcellent 21例,good 1例であった.小児のため至適位置に鋼線を刺入することは容易ではなく,鋼線の打ち直しにより手術時間がかかることを経験する.当科の手技は,手術時間の短縮と良好な術後成績が得られると考える.
  • 安井 行彦, 栗山 幸治, 阿部 真悟, 片岡 利行
    2023 年 30 巻 2 号 p. 18-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     小児上腕骨顆上骨折に対する手術は,徒手整復下の経皮的鋼線刺入術が行われることが一般的であるが,高度転位例では筋損傷を伴うことがあり,整復時に医原性神経血管損傷をきたす可能性がある.医原性神経血管損傷のリスクが高いと判断した症例に対して,前方アプローチで観血的整復固定術を行った治療成績を報告する.対象は完全転位型の上腕骨顆上骨折で,開放骨折,X線所見で筋損傷が疑われる,神経麻痺,橈骨動脈触知困難を理由に前方アプローチで観血的整復固定術を施行した14例.医原性の神経血管損傷は認めなかった.神経麻痺合併の7例は全例で回復した.Flynn 評価はFunctional factor は E:12例,G:2例, Cosmetic factor は E:10例,G:3例,P:1例であった.前方アプローチでの観血的整復固定術は,動脈・神経を確認できる利点があり,安全性の高い選択肢と考える.
  • 中川 敬介, 日高 典昭, 久保 卓也, 新谷 康介, 鈴木 啓介, 細見 僚, 中村 博亮
    2023 年 30 巻 2 号 p. 23-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     小児肘外傷で,上腕骨遠位骨幹端外側に骨片が存在する場合,鑑別診断としては,上腕骨外側顆骨折(以下LCF),上腕骨遠位骨端離開(以下ES),上腕骨外側顆骨折を伴う肘関節脱臼骨折(以下FD)が挙げられる.単純X線正面像で簡易な鑑別が可能か後ろ向きに検討した.症例は75例(男児62例,女児13例)で,受傷時平均年齢6歳2か月(0歳8か月~12歳2か月)であった.内訳は,LCF54例,ES10例,FD11例であった.骨片の転位方向は,LCFはすべて外方内反,ESはすべて内方内反,FDは外方内反または内方内反で,統計学的有意差を示した.骨片が外方内反転位していれば,骨形態からはESは否定的で,第一にLCFを考え,骨片が内方内反転位していれば,骨形態からはLCFは否定的で,ESを第一に考えることが正確な診断に至る一助と考える.
  • 湯浅 悠介, 千馬 誠悦, 成田 裕一郎, 齋藤 光, 宮腰 尚久
    2023 年 30 巻 2 号 p. 29-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     小児上腕骨内側上顆骨折に対する腹臥位手術の治療成績について報告する.2017~2022年に腹臥位手術を行い,術後3か月以上の経過観察できた7例7肘を対象とした.男児6例,女児1例,手術時平均年齢は11歳で,Watson-Jones分類は1型が1例,2型が3例,4型が3例で,合併損傷は1例に内側側副靭帯断裂,肘頭骨折を認めた.内固定方法は全例Tension band wiring(TBW)で,手術時間は平均84.1分であった.骨癒合は全例で得られ,手術合併症は自然消失した尺骨神経障害と鋼線のバックアウトによる創部感染を各1例に認めた.最終経過観察時に全例で疼痛の訴えはなく,肘関節可動域は伸展が平均6.4°,屈曲が平均141°であった.腹臥位は肘関節内側が真上を向くため,肘関節に外反力が加わらず,良好な視野の確保と容易な整復が可能となる.その結果として良好な治療成績につながった可能性がある.
  • 安藤 治朗, 笹沼 秀幸, 飯島 裕生, 渡邉 英明, 竹下 克志
    2023 年 30 巻 2 号 p. 32-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【諸言】小児上腕骨顆上骨折の手術成績において,術者の背景や経験を比較する報告は散見されるが,助手の経験や背景を検討した報告はない.【目的】同骨折における手術直後の整復位に関連する因子を明らかにし,助手の経験が手術後の整復位に与える影響を調査した.【方法】2011年1月1日から2022年3月31日の間に自治医科大学附属病院で手術を行った15歳以下の同骨折患者を対象とした.術直後の単純X線写真から整復位良好群と不良群の2群に分け,術直後の整復位と関連する因子を調査した.【結果】対象は42例で整復位良好群は30例,不良群は12例であった.経験豊富な外傷整形・小児整形医師が助手として手術することが整復位と有意に関連した因子であった.【結語】小児上腕骨顆上骨折の手術において,経験豊富な外傷整形・小児整形の医師が助手として手術することが手術直後の整復位良好となる因子であった.
  • 佐々部 敦, 志村 治彦, 藤田 浩二, 鏑木 秀俊, 二村 昭元
    2023 年 30 巻 2 号 p. 36-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     Floating elbowは同側の上腕骨と前腕骨の複合骨折で,神経血管損傷を合併しやすいと報告されている.2014-22年に当院で治療した小児floating elbow 6例は,平均年齢は6.8歳,男児5例,女児1例であった.上腕骨顆上骨折6例,橈骨遠位端骨折5例,橈骨尺骨骨幹部開放骨折1例であった.上腕骨顆上骨折は6例すべて鋼線固定を行い,うち4例は整復および神経血管確認のために前方を展開した.前腕の骨折は6例すべて髄内鋼線固定を行った.3例は初診時に橈骨動脈の触知が微弱であったが術中から術翌日には改善し,2例の正中神経症状は術後に改善し,その後の経過も良好であった.初診時にもう一方の骨折を見落としていた症例が2例あっため,小児の転落外傷ではfloating elbowの可能性を留意する必要がある.
  • 鈴木 啓介, 日高 典昭, 細見 僚
    2023 年 30 巻 2 号 p. 40-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     橈骨頚部骨折は近位骨片の転位するものが一般的であるが,遠位骨片が内側に転位した症例を報告する.12歳女児,トランポリンの着地に失敗して受傷した.単純レントゲンでは遠位骨片が内側に転位し,近位骨片は骨端離開を呈し完全転位していた.徒手および経皮的整復操作では整復されず,外側アプローチでの観血的整復を行った.遠位骨片に巻き付いた上腕二頭筋腱を解除することで整復された.術後1年の観察時には回外60度の可動域制限は残ったが日常生活に支障はみられなかった.頚部骨折において遠位骨片が鈎状突起や関節包に嵌入する報告はみられたが,上腕二頭筋腱が関与した報告はなかった.橈骨頭脱臼における上腕二頭筋腱が整復を阻害する機序が生じたと考えられた.治療法は観血的整復が必要である可能性が高いことを念頭に置き,整復阻害因子を術中によく観察して適切な対処が必要である.
  • 藤本 華奈, 鈴木 雅生, 市原 理司, 石井 紗矢佳, 大谷 慧, 原 章, 石島 旨章
    2023 年 30 巻 2 号 p. 430-434
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/02/01
    ジャーナル フリー
     小児のMonteggia骨折に着目し,その治療戦略について検討を行った.2015年4月~2022年9月に当院で加療を行った尺骨急性塑性変形(APB)を伴う症例と,転位が軽微な尺骨近位端骨折を伴う症例の小児12例を対象とした.平均年齢は6.4歳,男7例,女5例であった. Maximum Ulnar Bowing(MUB)が改善し回内外を行っても橈骨頭が再脱臼せず安定している症例はギプス固定,その他は観血的手術へ移行した.非観血群9例,観血群3例であった.術後のMUBの患健側差は非観血群のAPB症例で平均1.46mm,fracture症例で0.96mm,観血群は全てfracture症例で0.78mmであった.APBの症例で非観血的整復を行いMUBの患健側差が2mm未満までの改善は保存加療可能の一つの指標となりうる.骨折を伴う症例では尺骨の観血的手術を行い安定性を得ることが大切である.
  • 鈴木 浩司, 松岡 峰造, 中川 玲子, 堀木 充
    2023 年 30 巻 2 号 p. 44-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     軟骨下骨を含まない小児上腕骨小頭軟骨骨折は非常に稀であり,単純X線や単純CTで描出されず診断に注意を要する.今回,上腕骨小頭軟骨骨片に対して生体吸収ピンを用いた内固定を施行した1例を経験した.症例は10歳男児で,側転時に右肘痛を自覚し近医を受診,経過観察にて症状は軽減した.受傷7週間後に右肘痛再燃,右肘ロッキングを生じた.単純X線および単純CTで明らかな骨折は認めず,MRIで上腕骨小頭中央に10mm大の軟骨欠損,および腕橈関節後方に遊離軟骨片を認めた.右上腕骨小頭軟骨骨折の診断で,関節鏡精査および観血的整復固定を実施した.軟骨下骨を伴わない10mm大の軟骨片を生体吸収ピンで整復固定した.術後,肘関節可動域は健側同等で疼痛なく運動復帰した.一方,X線にて一過性のピン周囲骨吸収域を認めた.術後8ヶ月のSecond look手術で橈骨頭軟骨の浅い損傷を認めたが,整復軟骨は良好に生着していた.
  • 岡本 道雄
    2023 年 30 巻 2 号 p. 47-51
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    <症例提示>10歳,男児.転倒し右手をついて受傷した.右前腕骨骨幹部骨折対して,プレートを用いて整復固定した. 2年後再度転倒し,プレート遠位部で再骨折した.再術後2か月現在,可動域制限なく骨癒合傾向である.再手術後2か月時に両側前腕CT検査を行い,健患側で形状を比較した.結果,プレート直下の骨皮質の菲薄化を認めた.
    <考察>10歳以上の小児前腕骨骨折に対する固定方法は正確な解剖学的整復の必要性からプレートが多く選択されている.小児期におけるプレート周囲骨折の報告は少なく,プレート抜去の是非において未だ一定の見解はない.一方,プレートがどのように長管骨の横径の成長に影響を与えるか検討した報告は渉猟し得ない.10歳前後の骨折術後,骨髄腔は健側と同様に拡大していくことが分かった.小児骨幹部骨折術後の抜去のタイミング,危険性に関して判断材料の一つとなる有用な結果であると考える.
  • 桐山 真美, 山本 真一, 三上 容司
    2023 年 30 巻 2 号 p. 52-55
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     小児肘関節周囲骨折の中でもosteochondral flap fractureの報告は少ない.13歳男児が,右肘関節伸展位で転倒した際に手をついて受傷し,同日当科を受診した.右上腕骨内側上顆骨端線損傷と判断されるも,肘自動屈曲不能で伸展位で外固定されていた.除去後も可動域が改善せず,受傷4週過ぎに専門外来を受診した.右肘関節可動域は他動屈曲10°伸展10°と拘縮が生じつつあり,単純X線での腕尺関節亜脱臼,CTでは尺骨鉤状突起骨折と肘頭窩内側に剥離骨片が判明した.MRIで肘頭窩内側に滑車前方から連続する軟部組織塊があり,尺骨鉤状突起のosteochondral flap fractureを疑い,受傷5週過ぎに肘内側アプローチで関節授動術を行った.肘頭窩内の瘢痕組織と癒着した後斜走靱帯を切除することで,関節適合性は改善した.術後6か月には自動屈曲135°伸展 -5°まで改善した.
  • 遠藤 雄二, 山崎 貴弘
    2023 年 30 巻 2 号 p. 56-59
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     小児肘関節脱臼は比較的まれな外傷であり,なかでも分散脱臼は非常に稀な疾患である.
     今回我々は小児肘関節分散脱臼の症例を経験し,非観血的整復では橈骨頭の亜脱臼が残存したため観血的整復を施行したので報告する.
     症例は6歳の男児,下校中に階段から飛び降りて右手をついて受傷した.前医を受診し,橈骨頭脱臼の診断となり当院初診となった.単純X線像では橈骨頭の側方脱臼を認め,Bado分類type3のMonteggia骨折を疑ったが,CT像で肘関節横分散脱臼と診断した.同日全身麻酔下に非観血的整復を試みた.牽引により腕尺関節は整復されたが,橈骨頭の側方亜脱臼が残存したため,観血的手術を行った.外側を展開すると損傷した関節包と輪状靭帯が腕橈関節内にはまり込んでおり,引き出して修復することで,橈骨頭の亜脱臼は整復された.
     非観血的整復後の橈骨頭の亜脱臼に対して観血的手術が有用であった.
  • 島貫 景都, 多田 薫, 藤田 健司
    2023 年 30 巻 2 号 p. 60-63
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     2009年から2019年の10年間に当院で治療した15歳以下のJeffery型骨折8例を対象とし,橈骨頚部骨折に対しては傾斜角度が15度以上であればintrafocal pinningを行い,15度未満であれば保存療法を行った.織田の分類Type1が5例,Type2が3例であった.治療方法は手術6例,保存療法2例であり,保存療法を行った2例はいずれも織田の分類Type2であった.最終経過観察時,全例で屈曲,伸展,回内,回外の可動域の損失を認めず,橈骨頚部の自家矯正角度は平均4.5度であった.織田の分類Type2で橈骨傾斜角度が15度未満かつ尺骨骨幹部近位端骨折の転位がない症例に保存療法を行い良好な成績が得られた.MCL損傷については保存療法で治癒が得られる可能性があるが,強い外反不安定性がある場合には修復をした方が良いと考える.
  • 小川 健, 岩渕 翔, 井汲 彰
    2023 年 30 巻 2 号 p. 64-68
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     上腕骨遠位端骨折に対するA.L.P.S. Elbow Plating System(以下ALPS plate)の治療成績について,6か月以上経過観察可能だった19例を対象に検討した.平均年齢は66.7歳.全例肘関節後方より展開し,C2・C3の4例で肘頭骨切りを行い,それ以外は上腕三頭筋内外側からアプローチした.固定方法に関しては,後外側プレートと内側CCSで固定した症例が5例,後外側プレートと内側プレートが14例であった.遠位スクリューは後外側プレートより平均2.4本,内側プレートより平均2.0本刺入されていた.平均観察期間は11.8か月で,全例で骨癒合が得られた.平均可動域は伸展-12.5°屈曲124°,MEPSは平均94.7点であった.合併症としては尺骨神経障害3例,橈骨神経障害1例,内側プレートの違和感を5例に認め抜釘を行った.高齢者の症例を含めて,良好な臨床成績を得た.
  • 瀧川 直秀, 清水 博之
    2023 年 30 巻 2 号 p. 69-71
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     65歳以上の上腕骨遠位部関節内骨折15例の治療成績を調査した.ダブルプレートで治療した13例(DP群)と人工肘関節置換術で治療した2例(TEA群)について,骨癒合の有無,肘関節可動域,JOAスコア,合併症について比較検討した.DP群はAO分類C1型3例,C2型5例,C3型5例でTEA群は2例ともC3型であり1例はDubberley分類2BのCoronal Shear fractureを合併しており,もう1例はRAによる骨欠損を認めた.DP群で偽関節を3例に認め1例は他院で偽関節手術が行われた.肘関節ROM(屈曲,伸展),JOAスコアはDP群:124°,-7°,86点, TEA群は130°,-23°,84点であった.合併症は尺骨神経障害を5例に認めた(DP群4例,TEA群1例).70歳以上の高度粉砕例 やRAで関節破壊を認める例などは人工関節の選択も視野に入れる必要がある.
  • 中井 生男
    2023 年 30 巻 2 号 p. 72-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     75歳以上の高齢者上腕骨通顆骨折に対するプレート固定法の治療成績を検討した.2018年以降に当院でプレート固定法を施行した75歳以上の11例11肘を対象とした.男性1肘,女性10肘,右5肘,左6肘,手術時平均年齢は86.2歳,術前ASA-PSは平均2.5であった.内固定材はナカシマメディカル社ONIトランスコンディラープレート及び内側CCS,あるいはZimmer-Biomet社ALPS elbow system 後外側及び内側プレートを用いて固定した.術後1週間のシーネ固定を行い,その後自他動可動域訓練を施行した.術後経過観察期間は平均25.2週で,全例で骨癒合を得た.可動域は屈曲平均120.9°,伸展平均-15.9°,arc平均103.6°であった.合併症として術後無気肺(人工呼吸器管理4日間),異所性骨化2肘,内側スクリュー脱転1肘を認めた.
  • 清水 博之, 瀧川 直秀
    2023 年 30 巻 2 号 p. 76-79
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     高齢者の上腕骨通顆骨折(AO分類A2-3)に対してONI transcondylar plate(以下ONI plate)によるsingle plate+Canulated Cancellous Screw(以下CCS)固定を行い,その治療成績について検討した.2014年6月から2021年12月までに上腕骨通顆骨折AO分類A2-3と診断された65歳以上の症例に対して外側single plate+CCSで骨折観血的手術を施行し,術後3か月以上経過観察できた21例を対象とした(男性2例,女性19例,平均年齢80.2歳,術後経過観察期間平均10.8か月).術後,全例骨癒合を得られた.肘関節の平均可動域は屈曲119.5度,伸展-8.7度,JOA scoreは平均88.9点であった.術後合併症は2例にCCSの緩みが生じ肘関節の可動域制限を認めたが,治療成績は概ね良好で,本法は有用であると考えられた.
  • 橋本 貴弘
    2023 年 30 巻 2 号 p. 80-84
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【目的】上腕骨遠位端骨折は比較的稀な骨折であるが,術後合併症の頻度が高く,その要因として骨粗鬆症など様々な原因が報告されている.今回,高齢者上腕骨遠位端骨折患者における術中・術後合併症について検討した.【方法】プレート固定による治療を行った高齢者上腕骨遠位端骨折症例を対象とした.術後合併症と,年齢,併存症,治療法,執刀医の経験年数などとの関連について調査した.【結果】対象は18例,男性1例,女性17例で,年齢中央値80歳,合併症は6例(33%)に認めた.合併症発生群と非発生群との比較では,治療法,執刀医の経験年数などは差がなく,椎体骨折の既往と認知症が有意に発生群で多かった.また,術後屈曲可動域も有意に発生群で低下していた.【考察】椎体骨折の既往と認知症が術後合併症発生のリスクとなっている可能性が考えられた.また,リスクの高い患者の手術では慎重に治療方針を検討した方が良いと思われた.
  • 森田 晃造, 梅澤 仁
    2023 年 30 巻 2 号 p. 85-87
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     上腕骨遠位端coronal shear fractureの中で上腕骨小頭と滑車が分離し顆部後壁の粉砕を伴うDubberley分類type 3B 骨折症例の治療成績を検討した.対象は9例9肘で手術時平均年齢は62.1才であった.手術進入法は拡大Kaplan アプローチ4例,後方アプローチ5例であり全例とも埋没型インプラント及びロッキングプレートにて内固定した.全例骨癒合し,最終観察時平均の肘関節可動域は伸展-17.8°屈曲122.8°,JOA-JES scoreは87.3点であった.本骨折は内固定に難渋することの多い骨折であるが術前CTで前方骨折部の粉砕状況を評価し前方骨片の粉砕が軽度なら後方,高度なら拡大Kaplan アプローチと進入法を選択し,前方骨片を整復・内固定後にロッキングプレートによる強固な内固定を施行することにより,早期からの可動域訓練が可能となり良好な成績が獲得可能であった.
  • 大野 義幸, 白井 之尋, 山本 恭介
    2023 年 30 巻 2 号 p. 88-93
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     当院におけるCoronar shear fragment(以下,CSFg)を有する上腕骨遠位端関節内骨折12例12肘の治療成績を検討した.骨折型の分類ではDubberley分類1A:1肘,1B:2肘,2A:1肘,2B:1肘, 3A:1肘,3B:3肘,ならびにAO分類C3で,かつCSFgを有するもの(以下,AO-C3(CSFg)):3肘であった.結果:後壁の粉砕(Dubberley subtypeB),AO-C3に合併などで重症度,手術難易度が上がり,術後成績も悪化した.12肘のうち10肘に術後肘関節拘縮を合併症として生じたが,うち5肘に関節授動術を行い,成績の改善が得られた.AO-C3(CSFg)例の治療は後方皮切,後方アプローチによるダブルプレート固定後に,別に前方皮切,前方アプローチで,CSFgを直視下に double thread screwなどで解剖学的強固に固定するのがよい.
  • 髙田 寛史, 西村 大幹, 松浦 充洋, 吉田 史郎
    2023 年 30 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【目的】上腕骨遠位端外側の骨・軟骨欠損を伴った肘関節開放骨折の治療において,骨・軟骨再建を行わずに良好な成績が得られた2例を報告する.【症例1】39歳女性,軽自動車乗車中に横転.上腕骨遠位端外側の骨欠損,外側側副靱帯の損傷,橈骨頭の不安定性を認めた.受傷同日にデブリードマンと靭帯縫合,二期的に分層植皮を行った.術後6か月,肘関節の可動域制限や疼痛はなく,介護職にも復帰している.【症例2】45歳,女性.症例1と同様の受傷機転.上腕骨遠位端の骨・軟骨は外側40%程度欠損していた.同日にデブリードマンと外側側副靭帯縫合を行い,二期的に分層植皮を行った.術後8か月,肘関節可動域は良好で,疼痛もない.【考察】今回の2例では骨・軟骨再建をせずとも良好な短期成績であった.長期的には関節症の進行は危惧されるが,腕尺関節まで損傷がない症例では外側側副靱帯再建のみでも良好な成績が得られる可能性がある.
  • 山本 博史, 中村 亮太, 向井 章悟
    2023 年 30 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【目的】肘関節粉砕骨折3例を通して,経肘頭的アプローチによる展開の問題点について考察した.
    【症例】症例1,47歳男性.高所から転落して,左上腕骨遠位端粉砕骨折等を受傷した.経肘頭的整復固定した.術後,1年7か月で肘可動域制限は軽度で,日常生活での支障はない.症例2,40歳男性.7階より転落して,左肘脱臼骨折等を受傷した.肘頭骨折部を利用して整復固定した.術後,鉤状突起の再転位を生じ,再固定を行った.初回術後から1年8か月で,異所性骨化のため可動域制限を残した.症例3,75歳女性.歩行中転倒して,左上腕骨遠位端骨折を受傷した.経肘頭的展開では前方の骨片の評価が困難であったため,外側側副靭帯を切離して脱臼させて整復固定した.術後9か月で,肘関節に可動域制限が軽度残存した.
    【考察】経肘頭的アプローチは軟部組織が保たれている場合,靭帯の切離など前方展開に工夫を要すると考えられた.
  • 大村 泰人, 関根 巧也, 岡部 眞弓, 上原 浩介, 門野 夕峰
    2023 年 30 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     上腕骨滑車骨折が上腕骨小頭骨折に伴って生じた骨折は,上腕骨小頭・滑車骨折といい,上腕骨遠位部に生じる骨折のうちわずか3-4%の頻度といわれている.一方で上腕骨小頭骨折を伴わない場合には,上腕骨滑車骨折または滑車単独骨折,あるいは最初の報告者の名前をとりLaugier骨折と呼ばれ,非常に稀な骨折である.今回著者らは,骨折部のより広範囲の目視を可能とし,さらに至適位置へのscrew挿入を容易とすることを目的に,1皮切でover the top approachとnatural FCU split approachの2つのアプローチを併用し,結果的に良好な成績が得られた上腕骨滑車骨折の1例を経験したので報告する.
  • 池田 将吾, 秋田 鐘弼
    2023 年 30 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     肘頭骨折の術後経過中に陳旧性経肘頭脱臼骨折の状態に至った症例を経験したので報告する.患者は46歳男性,高所から転落受傷した.受傷時はX線で肘頭単純骨折がみられるのみであったが,術後感染により,当院受診時にはX線,CTにて肘頭骨折の遷延癒合,経肘頭前方脱臼,腕尺関節の骨欠損が生じていた.採血で軽度の炎症上昇,MRIで関節内の滑膜増生を認めたため,陳旧性経肘頭脱臼骨折の加療に加え感染除外の目的で二期的手術を施行した.一期目手術で瘢痕組織の切除,剥離を行い,脱臼整復位を獲得した状態で,ヒンジ付き創外固定器を設置した.組織培養の陰性確認後,二期目手術で肘頭骨折部の新鮮化,腸骨骨移植による腕尺関節形成,plate固定,ヒンジ付き創外固定器の再設置を行った.術後2週間で創外固定着用下での肘屈伸運動を施行した.術後2か月で創外固定を除去した.術後1年で骨癒合を認め抜釘術を施行した.術後15か月でMayo elbow performance scoreは95点であった.本症例では,ヒンジ付き創外固定器,腕尺関節への腸骨骨移植,plate固定により求心位を比較的維持した状態で骨癒合が得られ,良好な経過を辿った.
  • 辻村 啓輔, 水掫 貴満, 今中 彰, 鍜治 大祐, 仲川 喜之, 田中 康仁
    2023 年 30 巻 2 号 p. 112-114
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【症例】30歳男性.バイクで転倒受傷.経肘頭脱臼骨折に対して肘頭骨折部を利用した後方アプローチにて人工橈骨頭置換術,尺骨鉤状突起・肘頭の骨接合を行った.術後に再脱臼を認め,鉤状突起骨接合術および外側側副靭帯修復術を追加した.術後に肘回内外強直を認め,再手術後6ヶ月で肘頭プレート抜去と橈尺骨癒合解離術を施行し,肘筋-輪状靭帯複合体を癒合解離部に介在させた.再手術後8ヶ月後で回内/回外は20°/45°であり,癒合部の再癒合は認めていない.
    【考察】後方アプローチのみでの手術を行ったことで,鉤状突起の再固定を要し,2度の手術が必要となったことが近位橈尺骨癒合症を発症呈した要因の一つと考えられた.肘頭の骨折線が肘関節より遠位にある症例では後方アプローチのみでは限界があるものと考えられた.今回,癒合部解離術を行い,中間膜として肘筋-輪状靭帯複合体を介在させたが,現在のところ再癒合は認めていない.
  • 中西 凜太朗, 高原 政利, 澁谷 純一郎, 丸山 真博, 佐竹 寛史, 髙木 理彰
    2023 年 30 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     上腕骨顆上骨折後の内反肘変形では,内反,伸展,内旋の三次元的変形がみられる.はめ込み固定法は近位と遠位骨片を互いにはめ込む術式である.内反肘変形に対してはめ込み固定法を応用して三次元矯正を行った3例の成績を報告する.手術時年齢は9歳,17歳,29歳であった.術前のHumerus-elbow-wrist angle(HEWA)は-19度,-20度,-25度であった.はめ込み後に9歳児にはスクリュー,17歳と29歳の症例には片側プレートで固定を行った.平均経過観察期間は20か月であった。術後HEWAは13度,15度,9度であり,術後の矯正損失はなかった.全症例で愁訴と内反変形が改善した.はめ込み固定法を用いることで,三次元矯正が可能となり,大きな骨接触面が得られ,固定性が増し,骨癒合が得られ易くなったと考える.内反肘の矯正骨切りにはめ込み固定法は有用である.
  • 舩本 知里, 太田 壮一, 貝澤 幸俊
    2023 年 30 巻 2 号 p. 121-124
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     当科で橈骨頭粉砕骨折及び橈骨頸部骨折遷延治癒に施行した人工橈骨頭置換術の治療成績を後ろ向きに比較検討した.対象は,橈骨頭粉砕骨折6例と橈骨頚部偽関節1例の7例で,平均年齢77.6歳であった. Mason-Morrey分類III型が3例,IV型が4例で,使用インプラントはAnatomic Radial Head System(ARHS)が4例,EVOLVEが3例であった.最終経過観察時の可動域やJOA-JESスコアは,使用インプラントの違いによる有意差はなかった.ARHSの4例中3例では,術後1年で2.8mmの骨透亮像を認め,その後も骨透亮像は増大傾向にあった.一方,EVOLVEの3例では術後1年で1.3mmの骨透亮像を認め,その後骨透亮像の増大は見られなかった.再置換例は2例あった.Press-fit typeであるARHSは,高齢者を対象とした場合,ステムの弛みが増大する傾向があった.
  • 志村 治彦, 若林 良明, 山田 哲也, 白川 健, 佐藤 哲也, 藤田 浩二, 新関 祐美, 鈴木 志郎, 鏑木 秀俊, 鈴木 英嗣
    2023 年 30 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     橈骨頭粉砕骨折に対する人工橈骨頭置換術36例の治療成績と合併症について検討した.2005年から2017年に人工橈骨頭置換術を行い術後6か月以上の経過観察が可能であった36肘を対象とした.受傷時年齢は平均63歳,男性12例,女性24例で経過観察期間は平均37(6-121)か月であった.最終経過観察時の肘関節可動域は伸展平均‐9度,屈曲平均130度,前腕可動域は回内平均70度,回外平均81度であった.再手術は5肘(13.9%)6例に認め,関節拘縮に対する授動術2例,関節授動術後の表層感染によるdebridement1例,尺骨神経障害に対する神経移動術1例,深部感染によるインプラント抜去1例,有痛性のゆるみによるインプラント抜去1例であった.人工橈骨頭置換術の治療成績は比較的良好で安定していたが,2例でインプラント抜去となっていた.
  • 黒田 拓馬, 筒井 完明, 荻原 陽, 川崎 恵吉, 稲垣 克記
    2023 年 30 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     肘頭骨折に対するロッキングプレート固定術後の近位骨片脱転予防に,引き寄せ鋼線締結法を併用した方法の治療成績について調査した.適応は,初回手術後に近位骨片が脱転した症例,術前の画像検査で近位骨片の二重骨折を認めた症例,近位骨片への2本以上のスクリュー挿入が困難な症例とした.対象は,本法を用いて手術治療を行った4例4肘,男性2例,女性2例,平均年齢69. 3歳,初回手術2肘,再手術2肘,Colton group2: 2肘,group4: 2肘とした.経過観察期間は,平均10.7か月であった.最終診察時の肘関節屈曲は,平均142.5°,伸展は平均-26.3°であった.MEPSは平均95点であった.3肘で骨癒合は得られたが,1肘で鋼線刺入部のさらに近位で骨片の転位を認めた.引き寄せ鋼線締結法の併用は,近位骨片脱転予防の選択肢の1つとして有用と思われた.
  • 夏目 唯弘, 山田 陽太郎, 土橋 皓展
    2023 年 30 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     手術治療を行った肘関節後方脱臼を伴う尺骨鉤状突起単独骨折3例を対象とし,ACLCの修復が肘関節の安定性へ与えた影響を調査した.年齢・性別・骨折型・手術アプローチ・手術方法・最終関節可動域・最終JOAスコア・術前後の不安定性について調査した.平均年齢38.7歳,男性3例,骨折型Type1- subutype2 3例,前方アプローチ2例・Extended Kaplanアプローチ1例,ACLCが付着する尺骨鉤状突起を確認し,骨接合術を3例で行った.関節可動域平均(肘屈曲138.3°・肘伸展-10°・前腕回内85°・前腕回外86.7°),JOAスコア平均92.7であった.全例術前に後方不安定性を有し,2例は内反不安定性も有していた.全例術後不安定性は改善した.不安定肘においては,後方不安定性のみでなく内反不安定性にも寄与するACLCの修復を積極的に修復してよいと考えられる.
  • 三好 祐史, 轉法輪 光, 宮村 聡, 島田 幸造
    2023 年 30 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     尺骨鉤状突起骨折に対し,関節鏡補助下の整復と内固定行った9例の手術方法や治療成績を調査した.O'Driscoll分類はTip4例,Anteromedial4例,Basal1例で,整復方法は,7例はフックなどで骨片を整復,2例は骨片が小さいあるいは転位が少なく関節包ごと牽引した.Basalの1例のみスクリュー固定,残り8例は前方関節包へ糸を通し,骨孔を通して尺骨背側へpull-out sutureし骨片間を圧着させた.関節内遊離体を有する3例は鏡視下摘出,橈骨頭骨折を合併した1例は内固定を追加,外側不安定性を呈する5例は外側靭帯複合体を修復した.全例骨癒合し,最終観察時の平均肘関節可動域は伸展-4,屈曲140度.MEPSは平均97点であった.関節鏡補助下手術は,低侵襲な整復方法であるだけでなく,脱臼骨折を合併する症例は関節内に遊離体を認めることが多いため有用であり,治療成績も良好であった.
  • 市沢 歩美, 佐々木 規博, 石橋 恭之
    2023 年 30 巻 2 号 p. 143-145
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【はじめに】上腕骨頚部骨折と肘頭骨折を同側同時に生じた稀な症例を経験したため報告する.【症例】症例は72歳女性である.電球の掃除中にイスから転落し受傷,左上肢痛のため当科受診となった.上腕骨頚部骨折と肘頭骨折の診断となり,受傷3日目に上腕骨頚部骨折に対しては髄内釘を,肘頭骨折に対してはtension band wiring法で固定した.術翌日より可動域訓練を開始し,術後6か月で肩関節屈曲150°,水平屈曲110°,外旋20°,肘関節伸展/屈曲 -15°/145°と可動域制限が軽度残存するが,日常生活動作制限は認めなかった.【考察】上腕骨頚部骨折と肘頭骨折の同時発生例は我々が渉猟しえた限りではなかったが,他部位の骨折の同時発症例は散見され,受傷原因の多くは高エネルギー外傷だった.本症例は,肘軽度屈曲位による介達外力により上腕骨頸部骨折が,上腕三頭筋の牽引力により肘頭骨折が生じたと考えられた.
  • 阿部 真悟, 栗山 幸治
    2023 年 30 巻 2 号 p. 146-151
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    当院における尺骨非定型骨折2例3肘の治療経験を報告する.
    症例1は86歳女性.掃除中に突然,左尺骨非定型骨折を受傷した.10年来のビスホスホネート(以下BP)製剤が投与されていた.受傷2週で腸骨移植及びプレート固定術を施行した.LIPUS及びテリパラチド製剤を併用するも術後半年で偽関節となった.術後3年で歩行中に右尺骨非定型骨折を受傷した.髄内釘を用いた手術を施行し術後1年半で骨癒合を得た.症例2は68歳男性.右手で頬杖中に受傷した.4年前よりBP剤を投与されていた.受傷1週でMIPO法によるプレート固定術を施行し,LIPUS及びテリパラチド製剤を併用した.術後5カ月で骨癒合した.
    症例1左側では軟部組織を剥離しかつ固定性が足りずに偽関節となり,症例1右側の髄内釘では固定力不足で骨癒合まで時間を要した.MIPO法では強固な固定と軟部組織温存が可能であり骨癒合に有利であったと思われる.
  • 天野 貴司, 川崎 恵吉, 黒田 拓馬, 筒井 完明, 新妻 学, 酒井 健, 久保 和俊, 稲垣 克記
    2023 年 30 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     橈骨骨幹部骨折と鉤状突起骨折を合併した肘関節亜脱臼の稀な症例に遭遇し,前方から同時に固定し,良好な成績を得られたので報告する.症例は37歳男性.サッカー中に転倒受傷.レントゲン画像では長い第三骨片を有する橈骨骨幹部近位1/3部での横骨折,尺骨鉤状突起骨折を認め,肘関節単純MRI検査では内側側副靭帯損傷を認めた.アプローチは肘関節屈側を近位内側から遠位外側に向けての約25cmのS字皮切を用いた.橈骨は第三骨片をラグスクリューと非吸収糸で固定した後に,ロッキングプレートで横骨折を固定した.鉤状突起はT型プレートを一部カットして,フックプレート状に形成し,バットレス固定した.前方再建により,安定性が得られたため,側副靭帯の修復は行わなかった.術後はヒンジ付き肘関節装具,超音波骨折治療機器を使用し,JOAスコア91点となった.同様に固定している症例は渉猟し得ず,本症例のアプローチは有用と思われた.
  • 白瀬 統星, 金城 政樹, 西田 康太郎
    2023 年 30 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     両側側副靱帯断裂に尺骨鉤状突起欠損を合併した陳旧性性肘関節脱臼に対して肘頭からの骨軟骨移植による尺骨鉤状突起再建とsingle graftによる両側側副靭帯の再建を行なった1例を報告する.症例は50歳男性.転倒によって単純性肘関節脱臼を受傷した.前医にて脱臼整復されるも,その後の通院を自己中断され,陳旧性肘関節脱臼となった状態で受傷1年で当院紹介となった.当院受診時,肘関節の易脱臼性と内外反の動揺性を認め,画像所見で尺骨鉤状突起欠損を認めた.手術では欠損した尺骨鉤状突起に同側の肘頭から骨軟骨を移植し,Lassso法にて固定を行った.両側側副靱帯に対しては遊離腱を採取し,上腕骨の内外側のisometric point,尺骨靱帯付着部に骨孔作成した.骨孔に採取腱を通した後,ヒンジ付き創外固定を併用して腱の緊張を決定して両側同時再建おこなった.術後1年の時点で骨癒合得られ,ADL制限も認めない.
  • 千田 博也, 犬飼 智雄, 上用 祐士, 岡本 秀貴, 川口 洋平, 野田 陽平
    2023 年 30 巻 2 号 p. 160-165
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     重度肘関節外傷では強固な内固定を行うことが困難な骨折と,重篤な靭帯損傷を伴うことが稀ではなく,ギプス内での再脱臼,長期の外固定による関節拘縮や性急すぎる可動域訓練の結果生じる不安定性など様々な問題が生じうる.それに対し,ヒンジ付き創外固定器の使用が有用だったので報告する.対象はTerrible triad3例,肘関節脱臼骨折3例,経肘頭脱臼骨折3例,肘頭粉砕骨折2例,肘関節脱臼1例で,それぞれ骨接合術,靭帯縫合術,観血的脱臼整復術に引き続いて一期的に創外固定器を装着した.術後早期から自動,他動可動域訓練を行った結果,最終評価時の肘関節可動域の平均は屈伸125.8度,回内外166.6度で,JOAscoreは平均89.2点であった.早期から可動域訓練を開始することにより拘縮を防止し,また同時に良好な安定性を獲得することができ,極めて有用であった.
  • 小暮 敦史, 菅谷 岳広, 小野田 祥人, 相澤 俊峰
    2023 年 30 巻 2 号 p. 166-170
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     Terrible triad injury(TTI)において外側尺側側副靱帯(LUCL)の尺骨付着部損傷はまれである.症例は20歳代後半の女性の墜落外傷で左肘関節後方脱臼,橈骨粗面に及ぶ橈骨頭骨折,鉤状突起骨折を受傷しTTIと診断した.Kaplan extensile lateralアプローチでの展開時,上腕骨側で伸筋群筋起始部・LUCLの損傷がなかった.鉤状突起はLasso法,橈骨頭はプレートで固定した.LUCLは輪状靱帯と共に尺骨回外筋稜から剥離しており修復を試みたが確実な手技が困難だった.術後9日目に再脱臼を生じた.再手術では同一皮切でKocherアプローチの筋間で展開した.尺骨近くでLUCLの断端を認めアンカーで修復したところ安定した.術後2年目,痛みや不安定性はなく元の生活に復帰していた.LUCLの尺骨付着部損傷に対してKocherアプローチの筋間の併用が有用と考えられた.
  • 畑下 智, 佐藤 俊介, 千葉 紀之, 川前 恵史, 増子 遼介, 伊藤 雅之
    2023 年 30 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,不安定肘に対し外側側副靱帯の修復手術を施行した症例の,肘関節周囲の合併損傷と損傷形態を検討することである.【対象と方法】16例を対象とした.来院時脱臼の有無,肘関節周囲の合併損傷(骨折,伸筋・屈筋群損傷,MCL損傷)を後ろ向きに調査し,損傷形態を検討した.【結果】損傷形態はPLRI 11例,PMRI 2例,posteriorOFD 3例であった.さらにPLRIは骨折のないもの,典型的Terrible Triad Injury(以下TTI),部分的TTIの3形態に分類された.伸筋群損傷は,PLRIはECRL/B・EDCから後方の肘筋まで広範囲に及んでいたが,PMRIとOFDは部分的であった.【考察】PLRIの伸筋群の損傷形態はPMRIやOFDでは認められず,これはPLRIが外旋力で生じていることを支持するものであり,その不安定肘の損傷形態がPLRIであることを示唆している.
  • 松山 善之
    2023 年 30 巻 2 号 p. 176-179
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    Sideswipe injuryにおける外傷性肘外側側副靱帯(LCL)欠損に対して靱帯再建をした1例を報告する.
    【症例】41歳男性,自動車運転中に車両が横転し受傷した.肘外側に開放創を認め,上腕骨外側上顆欠損,LCL-Complex(LCL-C)の近位が欠損,LCL-Cの遠位は一部残存していた.半腱様筋腱を用いてLCL-C再建術を施行した.
    【考察】LCL再建は上腕骨外側上顆に骨孔をあけ等尺性に靱帯再建をする方法があるが,メルクマールの外側上顆が欠損している場合,回転中心に骨孔をあけて靱帯再建をすることは困難である.本症例は外側上顆欠損があったが,LCL-Cの生理的なY字構造におけるConjointPointを考慮し再建靱帯で橈骨頭を外側から支え,上腕骨小頭中心のやや前方に靱帯を通すことで肘関節を安定化し,早期から可動域訓練を行い良好な機能を得た.
  • 中村 恒一, 宮澤 諒
    2023 年 30 巻 2 号 p. 180-184
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     橈骨粗面部の骨棘変化により,遠位上腕二頭筋腱部の障害を生じたと考えられた3例を経験したので報告する.3例の平均年齢は75歳(66歳~85歳),男性2名,女性1名であった.3例とも明らかな外傷のエピソードはなく,慢性経過での肘窩の痛みが生じ,当院受診となった.X線画像,CT画像にて橈骨粗面部の骨棘形成を認め,超音波検査で前腕回内時に粗面部骨棘が上腕二頭筋腱へ干渉していることを認めた.1例は遠位上腕二頭筋腱損傷と滑膜炎に対してブロック治療を行った.他2例は遠位上腕二頭筋腱の部分断裂を疑い手術を施行した.手術を行った2例中,1例は遠位上腕二頭筋腱の部分断裂,1例は完全断裂を認めた.2例とも骨棘切除と腱の縫合術を行い,術後痛みはなくなり,臨床成績は良好である. 橈骨粗面部の骨棘変化が前腕回内時に上腕二頭筋腱とインピンジすることでその周囲の滑膜炎,腱の部分断裂,完全断裂を生じたものと考えられた.
  • 國分 直樹
    2023 年 30 巻 2 号 p. 185-188
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     緊張が強く直接修復が困難であった陳旧性遠位上腕二頭筋腱断裂に対し,腱延長術に人工靱帯による補強を併用し,解剖学的に修復することで良好な成績が得られたために報告する.症例は53歳男性,腕相撲をしていて右肘関節部の疼痛が出現した.1か月程様子を見ていたが改善無く当科を受診され,陳旧性の遠位上腕二頭筋腱断裂を認めたため受傷44日目に手術を行った.断裂腱の短縮が強く修復には肘関節を90度屈曲する必要があり,腱実質部にスライド延長を加えて2cm延長した後にFiber tapeを用いて補強し,肘関節屈曲45度で橈骨粗面にSwiveLockを用いて固定した.術後2年の最終観察時,可動域制限なく,筋力は対健側比で肘屈曲106%,前腕回外100%,MEPS: Excellentであった.本法は手技も容易で腱採取の侵襲もなく,緊張の強い陳旧性遠位上腕二頭筋腱断裂に対する有用な治療法と考える.
  • 大竹 悠哉, 助川 浩士, 小沼 賢治, 見目 智紀, 田澤 諒, 髙相 晶士
    2023 年 30 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    遠位上腕二頭筋腱断裂の2例の手術治療を経験したので報告する.
    症例1:40代男性.倒れたバイクを起こそうとした際に遠位上腕二頭筋腱断裂を発症し,患者希望で保存療法を行ったが疼痛が持続するため受傷から6週後に手術を施行した.手術は断裂腱をcortical buttonとinterference screwを用いて橈骨粗面に直接固定を行った.
    症例2:40代男性.倒れてきたテレビを腕で受け止めた際に遠位上腕二頭筋腱断裂を発症し,コロナウイルスパンデミックの影響で受傷から9週後に手術を施行した.手術は症例1と同様とした.
    受傷から6週間以上経過しており腱の短縮を認めたが,両例とも解剖学的な一次修復が可能であり術後良好な成績を得られた.
  • 加藤 知行, 岡崎 真人, 田崎 憲一
    2023 年 30 巻 2 号 p. 194-197
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     2013年以降当院で経験した7例の上腕三頭筋腱停止部裂離骨折の治療方法や転帰について検討した.性別は男性4例,女性3例,受傷時平均年齢は42.3(11-64)歳,平均経過観察期間は9.1(5-15)か月だった.transosseous sutureを行ったものが4例,suture anchorを用いたものが4例,tension band wiringを行ったものが2例,Kirschner鋼線で固定を追加したものが1例あった(重複あり).Kirschner鋼線で骨片を固定しなかった3症例で骨片離開がみられ,うち2例で上腕三頭筋使用に伴う愁訴が残った.上腕三頭筋腱裂離骨折の手術方法としては様々な方法が報告されている.骨片の離開を防ぐためには術後外固定の方法より,骨片を解剖学的に整復したうえで,薄い骨片でも上腕三頭筋筋力に抗することができる固定力を得ることが重要と考えられた.
  • 冨山 陽平, 岩橋 徹, 数井 ありさ, 塩出 亮哉, 宮村 聡, 岡 久仁洋, 田中 啓之
    2023 年 30 巻 2 号 p. 198-202
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【目的】医原性筋皮神経単独損傷後に長期経過した症例に対して,尺骨神経部分移行術 (Oberlin法)を施行し,良好な治療成績を辿った1例を報告する.
    【症例】主訴は左肘屈曲困難.22歳男性,アメフトの試合で左肩を地面に強打し,左肩関節を脱臼.近医受診し Bankart損傷の診断で鏡視下 Bankart修復術,Bristow変法を施行された.術後,医原性の筋皮神経損傷を発症し術後 8ヶ月で当院紹介となった.前回手術から 12ヶ月時点で Oberlin法を行い,良好な治療経過を辿っている.
    【考察】神経損傷から手術までの期間が長期に及ぶ場合,神経筋接合部に変性が生じるため一般的に筋・腱移行術が選択されるが,本症例では Oberlin法で良好な治療成績を辿っており,長期経過例においても若年では有用な方法であると考えられる.
  • 平 雄一郎, 麻田 義之
    2023 年 30 巻 2 号 p. 203-205
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     橈骨動脈アプローチでの心臓カテーテル検査及び治療後の前腕コンパートメント症候群は,稀である1)2).今回,同アプローチでの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後に,肘から前腕にかけての急性コンパートメント症候群をきたした症例を経験したので報告する.緊急の筋膜切開術を施行し,良好な術後結果であった.本症例の発症の原因は,カテーテルやガイドワイヤーによる肘周囲での血管損傷や,抗血小板薬を内服していたことが考えられた.また,発症後早期に減圧筋膜切開術を行うことが有用であると考える.稀ではあるが,本症例のような発症機転も存在することは,迅速な診断や治療を行うために留意しておく必要があると考える.良好な術後経過であったが,開放創の閉鎖方法については今後も検討が必要である.
  • 八田 卓久, 信田 進吾
    2023 年 30 巻 2 号 p. 206-210
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     肘関節内骨折に伴う外傷後肘関節拘縮症例に対して,鏡視下もしくは鏡視補助下での肘関節授動術を行った15例の成績を評価した.肘関節内骨折の内訳は,肘頭骨折が6例,肘頭脱臼骨折が4例,terrible triad injuryが3例,上腕骨coronal shear骨折が2例であった.鏡視下に関節内の癒着を剥離し,関節包の切離として前方関節包は近位付着部および尺骨における遠位付着部を,後方関節包は近位付着部を十分に切離した.屈曲制限の強い6例(他動屈曲100°未満)には,尺骨神経前方移行術および内側側副靭帯後斜走線維の切開を追加した.全例で関節可動域と肘関節機能の改善が得られた.術後に異所性骨化や神経障害を生じた症例はなかったが,初回手術後8か月で授動術を行った1例で肘頭骨切り部の再骨折を生じた.本法は術後可動域の改善を得る上で有用な治療法と思われるが,手術時期については慎重に考慮すべきである.
  • 川島 至, 岩堀 裕介
    2023 年 30 巻 2 号 p. 211-214
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
    【はじめに】我々は橈骨頭骨折・尺側側副靭帯損傷後の肘関節拘縮に対してR-PWを用いた治療を行ったところ異所性骨化が増悪した症例を経験したので報告する.【症例】41歳男性.転倒して右手をつき右肘痛が出現し,前医を受診して右橈骨頭骨折の診断となり,4週間の外固定の後,可動域訓練を開始した.受傷後8週時点で,右肘屈曲80度伸展-20度の関節拘縮と単純X線像にて肘関節内側のわずかな異所性骨化を認め当科紹介受診となった.可動域改善を目的にR-PWを用いた治療を開始したが,改善乏しくCTで異所性骨化の増悪を認め,肘部管症候群も合併していたため,骨化部摘出と関節授受動術及び尺骨神経皮下前方移動術を施行し改善した.【考察】本症例ではわずかにあった異所性骨化がR-PWも一因となり増悪した可能性を考える.異所性骨化をわずかでも伴う関節拘縮例に対してR-PWを用いる時には異所性骨化の増悪に注意を要する.
  • 麻田 義之, 平 雄一郎
    2023 年 30 巻 2 号 p. 215-217
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/01/30
    ジャーナル フリー
     我々は,人工肘関節(以下TEA)周囲骨折に対する骨接合術後に早期のプレート折損を来たし,再手術に至った1例を経験した.症例は,93歳,女性.TEA施行後の左尺骨骨折に対し観血的骨接合術を施行した.固定には,1/3円プレート(スクリュー径2.7mm)を用いた.術後2か月の時点で明らかな外傷機転なくプレート折損を伴う再骨折が生じた.再骨折から4か月後に再手術を行い,LCPプレート(スクリュー径3.5mm)を用いて固定,自家骨移植を併用した.術後1年の時点で骨癒合が得られ,受傷前のADLレベルまで回復した.本症例の問題点は,固定インプラントの選択が適切であったか,ストレスに対する脆弱部を残した手技上の問題,および後療法,生活指導の不徹底の3点が考えられた.TEA後周囲骨折は原疾患やセメント使用により骨癒合に不利な状態となっており,治療の全過程で,より慎重な配慮が求められる.
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