抄録
【症例】30歳男性.バイクで転倒受傷.経肘頭脱臼骨折に対して肘頭骨折部を利用した後方アプローチにて人工橈骨頭置換術,尺骨鉤状突起・肘頭の骨接合を行った.術後に再脱臼を認め,鉤状突起骨接合術および外側側副靭帯修復術を追加した.術後に肘回内外強直を認め,再手術後6ヶ月で肘頭プレート抜去と橈尺骨癒合解離術を施行し,肘筋-輪状靭帯複合体を癒合解離部に介在させた.再手術後8ヶ月後で回内/回外は20°/45°であり,癒合部の再癒合は認めていない.
【考察】後方アプローチのみでの手術を行ったことで,鉤状突起の再固定を要し,2度の手術が必要となったことが近位橈尺骨癒合症を発症呈した要因の一つと考えられた.肘頭の骨折線が肘関節より遠位にある症例では後方アプローチのみでは限界があるものと考えられた.今回,癒合部解離術を行い,中間膜として肘筋-輪状靭帯複合体を介在させたが,現在のところ再癒合は認めていない.