2023 年 30 巻 2 号 p. 152-155
橈骨骨幹部骨折と鉤状突起骨折を合併した肘関節亜脱臼の稀な症例に遭遇し,前方から同時に固定し,良好な成績を得られたので報告する.症例は37歳男性.サッカー中に転倒受傷.レントゲン画像では長い第三骨片を有する橈骨骨幹部近位1/3部での横骨折,尺骨鉤状突起骨折を認め,肘関節単純MRI検査では内側側副靭帯損傷を認めた.アプローチは肘関節屈側を近位内側から遠位外側に向けての約25cmのS字皮切を用いた.橈骨は第三骨片をラグスクリューと非吸収糸で固定した後に,ロッキングプレートで横骨折を固定した.鉤状突起はT型プレートを一部カットして,フックプレート状に形成し,バットレス固定した.前方再建により,安定性が得られたため,側副靭帯の修復は行わなかった.術後はヒンジ付き肘関節装具,超音波骨折治療機器を使用し,JOAスコア91点となった.同様に固定している症例は渉猟し得ず,本症例のアプローチは有用と思われた.