2023 年 30 巻 2 号 p. 80-84
【目的】上腕骨遠位端骨折は比較的稀な骨折であるが,術後合併症の頻度が高く,その要因として骨粗鬆症など様々な原因が報告されている.今回,高齢者上腕骨遠位端骨折患者における術中・術後合併症について検討した.【方法】プレート固定による治療を行った高齢者上腕骨遠位端骨折症例を対象とした.術後合併症と,年齢,併存症,治療法,執刀医の経験年数などとの関連について調査した.【結果】対象は18例,男性1例,女性17例で,年齢中央値80歳,合併症は6例(33%)に認めた.合併症発生群と非発生群との比較では,治療法,執刀医の経験年数などは差がなく,椎体骨折の既往と認知症が有意に発生群で多かった.また,術後屈曲可動域も有意に発生群で低下していた.【考察】椎体骨折の既往と認知症が術後合併症発生のリスクとなっている可能性が考えられた.また,リスクの高い患者の手術では慎重に治療方針を検討した方が良いと思われた.