抄録
徒手整復が不能な骨端核出現前の小児肘関節脱臼において,診断に超音波検査(以下US)が有用であったので,報告する.症例は5歳男児で転倒により左肘関節を受傷した.単純X線像にて,明らかな骨折はなかったが,左肘関節後外側脱臼を認めた.徒手整復を試みるも整復は困難であり,USを施行した.健側と異なり,左上腕骨遠位内側に無エコー像を示す軟骨成分を認めず,上腕骨内側上顆骨片の転位が示唆された.脱臼整復阻害因子と判断し,内側アプローチにて観血的脱臼整復術を施行した.屈筋群が付着している内側上顆骨片が腕尺関節に嵌入しており,前方に引き出すと,肘関節の脱臼が整復された.骨折部はtension band wiringを行った.術後合併症もなく経過している.本症例は5歳であり,X線検査での診断が困難であった.骨端核出現前の小児肘関節脱臼において,軟骨成分も評価できるUSが有用であった.