抄録
整復に難渋した小児の橈骨頭脱臼2例を経験した.症例1:8歳女児,鉄棒中に左肘を捻り受傷,尺骨塑性変形および橈骨頭の前方脱臼を認めた.徒手整復不能で観血的整復を行った.断裂した輪状靭帯が腕橈関節内に介在し,これを切除すると橈骨頭は整復可能であったが不安定で,長掌筋腱を用いて靭帯再建を行った.症例2:7歳女児,ボルタリング中に転落して右肘を受傷,尺骨塑性変形および橈骨頭の前方脱臼,転位のない肘頭骨折(Hume骨折)を認めた.徒手整復不能で観血的処置を行った.腕橈関節内に関節包および断裂した輪状靭帯の一部が嵌頓しており,これらの切除で整復可能となったが前腕回内で脱臼するため尺骨骨切りおよび輪状靭帯の修復を追加した.橈骨頭が徒手整復不能な場合は腕橈関節内への介在物の可能性を検討すべきで,介在物切除により橈骨頭が整復され回旋時も安定するのであれば必ずしも尺骨の矯正は不要である可能性が示唆された.