日本電磁波エネルギー応用学会機関誌
Online ISSN : 2434-1495
高周波高出力半導体の現状動向および応用例
半谷 政毅 弥政 和宏新庄 真太郎
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2016 年 2 巻 1 号 p. 7-10

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抄録

高周波技術は、携帯電話等の無線通信や種々のレーダ、マイクロ波加熱など様々なシステムに応用されている。これらのシステムでは、直流電力を大電力の高周波信号に変換する高出力増幅器が広く用いられる。高出力増幅器は、出力電力・消費電力・線形性など、システム性能を決定づける最重要コンポーネントの一つである。高出力増幅器を構成するデバイスは、真空電子管と半導体とに大別できる。図 1-1 に、高周波高出力増幅器用デバイスの棲み分けを示す。同図において、半導体の出力電力は SSPA(Solid State PowerAmplifier)としての値である。 クライストロンや TWTA(Traveling Wave TubeAmplifier)に代表される真空電子管は、およそ 1920年代から 1970 年代における高出力増幅器の主流であった。後述する半導体に比べて短寿命であることに加え、装置が大型であるといった問題があるが、その高出力・高効率特性ゆえ、数10kW を超える出力電力範囲においては、未だ真空電子管の独壇場である。 一方の半導体であるが、トランジスタの実用化が1960 年頃に始まるや否や、長寿命・小型であるという特長と、真空電子管のような高電圧を必要としない取り扱い易さ等から、急速にその適用範囲を拡げていった。特に、近年盛んに研究・開発がなされている窒化ガリウム(GaN)は、その広いバンドギャップと高い電子移動度により、従来の半導体であるシリコン(Si)やガリウム砒素(GaAs)では実現できなかった高出力特性が得られるようになった。これにより、一部のシステムにおいては、kW 級の真空電子管を半導体に置き換える動きが始まっている。 本稿では、現在の高周波高出力半導体の主役であるGaN を中心に、その高周波数化・高出力化についての現状動向を示す。また、システムへの応用例として、携帯電話基地局向け高出力増幅器、気象レーダ向け高出力増幅器およびマイクロ波加熱向け SSPA の概要を述べる。

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© 2016 特定非営利活動法人 日本電磁波エネルギー応用学会
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