抄録
本研究では,他者の行動をフィードバックすることが,家庭の電気使用量に影響を及ぼすかをフィールド実験により検討した。他世帯の電気使用量と自世帯の使用量の比較を行うことで電気使用量を2%程度減少させる効果があることが報告されているが,それに伴う心理的プロセスは充分に明らかになっていない(Haig, 2014; Allcott & Rogers, 2012) 。本研究では大阪市で行われた「Leading Eco Lifeつるみ」プロジェクトの参加者を対象に他の参加者の電気使用量をフィードバックした。分析の結果,フィードバック群とフィードバックなし群の電気使用量の減少は有意傾向であることが示された。1回のみの他者行動のフィードバックでもわずかではあるが電気使用量に差が見られた。またフィードバック群間での差は見られず,自世帯と他世帯の比較を含むかは電気使用量に影響を及ぼさないことが示唆された。電気使用量を従属変数とした重回帰分析では,質問紙で回答した環境配慮行動の実行度も有意な規定因となっており,意識的な環境配慮行動の実行が電気使用量にも影響を及ぼすことが示された。