2018 年 11 巻 2 号 p. 59-62
本稿では,従来の言語学,特に認知言語学の理論と,生態学的な観点との接合について考察する.まず従来の研究として,Reed (1996) や河野 (2003) 等が述べるような,言語の知覚や行為を促す役割について確認し,Norman (2010) の議論を参考に,アフォーダンスの選択を制限するものとしてデザインの役割を定義する.さらに(認知)言語学におけるフレーム意味論(Fillmore 1982, 1988)におけるフレームの概念を導入し,生態学的に〈実在〉する社会的アフォーダンスとして読み替えることができることを主張する.言語表現はそのフレームとしての社会・環境デザインの上で知覚を促すデザインとなっている.文の理解は情報伝達ではなく〈実在〉するフレーム内におけるアフォーダンスの現前化であると読み替えることができることを述べる.