生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
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ショートノート
成人片麻痺者におけるボールと風船の治療的応用
佐藤 将人南 誠一
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2020 年 12 巻 1 号 p. 17-21

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抄録

脳卒中後遺症による成人片麻痺者の上肢や手の治療場面では,積み木や輪投げといった物品やハサミなどの道具を治療手段として用いる事が多い.片麻痺者が,物品や道具を扱う為に必要な知覚情報を探索し,運動スキルに変換していく過程を用いて,中枢神経系の回復を期待できるからである.また,物品や道具といった対象の操作に注目し,回復の妨げとなりやすい運動への過剰な意識を減弱させる事は自律的な運動学習の獲得に有用であり,その対象の選択には片麻痺者の心身の状態,用いる対象特性などの分析が要求される.ボールや風船は,変化に富む多様な動きが楽しさをもたらしてくれる運動性の豊かさに特徴がある反面,それ自体を扱うためには自由度の高い運動性から安定性を探り出す特徴的な知覚情報の探索が求められるが,片麻痺者は上肢・手の機能の問題に加え,知覚情報の探索過程にも困難性を抱えており,それらを上手く扱えない事が多い.今回,片麻痺者の臨床から,ボールや風船を操作する時,目的動作が成立する為に必要な運動要素と手に入力される様々な情報の中からその運動と共に導き出せる特有の知覚情報を抽出する過程への援助・誘導が上肢・手の機能改善に有用である事が示された.そして,ボールや風船の治療的応用は,対象-操作の知覚過程を再連結する機能的活動の遂行であると捉えられた.

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© 2020 日本生態心理学会
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