2020 年 12 巻 1 号 p. 3-13
園児の遊びに物的・人的環境が果たす役割を明らかにするために,保育所にある傾斜付砂場で遊ぶ園児を観察 した.遊びにある水の行為と砂の行為を対象に,遊びの展開,遊んでいる場所とそこで行われている行為,移動の場所という3 つの視点から分析した.遊びは水を流すことから始まり,偶発的な出来事を利用していた.最初に砂場に入った園児の多くは水を流すことから遊びを始め,途中から砂場に入った園児は,入った当初は特定の場所に滞留しないという特徴が明らかになった.園児は砂場の複数の箇所に分かれて遊んでいた.園児は多様な場所を移動していたが,水を上に運ぶ際には足場が安定した石段を移動していた.園児たちが偶発的事象を活かして遊びを生み出し,水の流れが複数箇所で遊ぶ園児たちをつないでいたことが示唆された.“そこでできること”に基づいて作成する生態学的地図を用いて子どもの遊びを理解することの可能性を論じた.