2021 年 13 巻 1 号 p. 3-14
本稿の目的は,ギブソンによる画像理論の全容を解き明かすことである.ギブソンは画像経験の本性を,その二重性にみる.画像経験が二重性を伴うことは事実である.われわれは画像をまえにして,たしかに,画面と画面に描写されているものとを見る.しかし,私の見るところ,そうした二重性によって画像経験の内実が尽くされることはない.画像経験の本性は二重性にではなく,むしろ三重性にあると,本稿は論ずる.そして,そのことが,ギブソンが示した画像の定義そのものから導きだされうることを,したがって,本稿の提示する見解が,ギブソンによる画像理論の正統な解釈たりうることを,精緻なテクスト読解によって証明する.本稿は,これまでには十分に検討されることのなかった,ギブソンによる画像理論の真意を精確に見定めるものとなる.