2021 年 13 巻 1 号 p. 33-35
本研究は演劇における即興性に着目する. 即興演劇とは, 台本がなく, 役柄やストーリーが未決定な状況から, 観客が見ている前で, 時間の中断なしに, 架空の演劇を創作するものである.この劇空間 を成立させるためには, 相手の俳優の行為(発話を含めて)を読み取り, 方向性を予知して, もし予期せぬ状況に直面した場合は, すぐさま解決を見出し行動するという, 柔軟な行為の修正が必要となる. そこで本研究では, 実際に演じられた即興演劇の映像と俳優へのインタビューのデータから, 2名の俳優がどのように相手の行為を読み取り, 自分の行為を開始するか, どのように環境の資源を使ってアイデアを生成するかという点に関して検討を行った. その結果, 俳優たちは, 劇中に行われたアイコンタクト , 身体の向きや行為, セリフの言い方など, 劇空間に埋め込まれた相手の行為を, 自分の創作の資源として活用していることが分かった.