2022 年 14 巻 1 号 p. 149-156
本研究は可聴域外の空気振動が無自覚的な生体活動に対する影響を明らかにすることを目的と した.予備実験では,可聴域上限以上の空気振動(超音波)を含む自然環境音を聴取している際の人の耳周辺の血流量を解析した.その結果,超音波付加時には血流量の速度に変化が認められ,超音波が生体活動へ影響することが示唆された.そこで,次の実験では,心拍変動解析及び皮膚表面温度解析結果を超音波付加の有無で比較した.その結果,超音波が可聴音に重畳すると,皮膚表面温度が上昇すること,自律神経系の均衡の指標とされる値の変動パターンに特徴的な傾向が現れることが認められた.これらを元に,自然界に存在する空気振動を知覚することが自覚的及び無自覚的な行為調整に果たす役割について議論する.