本研究では,行為者にとっての障害物の生態学的な意味(危険性,情動性など)が,回避行動に及ぼす影響を検討するため,仮想環境で跨ぎ越え動作を計測・解析し,条件ごとに比較した.参加者は実環境,および,VR(仮想現実)とMR(複合現実)を統合したXR空間内を歩行しながら,4種類の障害物(実環境内のブロック,VR内のブロック,空き瓶,猫)を跨ぐよう教示され,各障害物を通過する瞬間の爪先の高さと速度が比較された.その結果,外寸はほぼ同じであっても,実環境よりVR環境で,かつ,空き瓶や猫に対して,参加者は先導脚をより高く持ち上げ,後続脚の速度を増加させる戦略をとる傾向が観察され,行為の文脈における対象の生態学的な意味が,障害物の知覚や行為に影響する可能性が示唆された.今後,本研究の知見がリハビリテーションや転倒予防プログラムの開発などに応用されることが期待される.