2026 年 18 巻 1 号 p. 50-54
即興演劇における発話の生成は,他者を含む環境との即時的なインタラクションとして捉えられる.本研究では,即興演劇(119発話)と台本演劇(112発話)における発話と間の時間構造を比較した.台本には即興で生成されたセリフを使用し,発話内容を統制した(Jaccard係数0.92).結果,発話速度は即興演劇より台本演劇の方が速く(p < .001),発話内およびターンテイキングの間は即興演劇の方が長かった(発話内;p=.013,ターンテイキング;p=.004).短期的変動に関する検討では、発話内およびターンテイキングの連続する間において、即興演劇の方が高い変動であった。(発話内;p=.007,ターンテイキング;p=.016).Detrended Fluctuation Analysisのスケーリング指数では,即興演劇が台本演劇より高かった.さらに物語を起承転結の4セクションに分割して,間に関するKL Divergenceを算出した結果,即興演劇では終盤に向けてセクション間のサプライズが単調増加し(起→承:0.71 bits,承→転:7.25 bits,転→結:11.29 bits),台本演劇では頭打ちの傾向を示した(起→承:0.94 bits,承→転:4.67 bits,転→結:4.38 bits).これらの知見は,即興における「間」が,物語展開に伴う環境とのインタラクティブな調整過程を反映する可能性を示唆する.