2026 年 18 巻 1 号 p. 65-72
本研究の目的は,音楽に対する暴露が飼育下のネズミイルカの行動に及ぼす影響を明らかにすることであった.実験では,水族館に飼育されている2頭のメスのネズミイルカに対して,4種類の異なるクラシック音楽をランダムに呈示し,音楽の有無が2頭に与える影響を比較した.観察指標として,浮上行動,ネズミイルカの気分評価尺度を設定した.実験の結果,2頭とも音楽を呈示した方が浮上行動に費やす時間が有意に増加した.浮上行動はストレスや警戒心が高まる環境では頻発しない行動と言われている(幸島ほか,2008).また,飼育員による2頭の気分評価尺度を得点化した値は,音楽呈示期間が長くなると増加しており,飼育員から見ても2頭が落ち着いた状態であったことを意味している.以上のことから2頭は,音楽が呈示されたプールを警戒する必要のない環境だと知覚した可能性が考えられる.つまり音楽がネズミイルカに対して安全な場所のアフォーダンスを提供し得ることを示唆する.