ダイナミックタッチ研究のひとつとして,視覚的な情報を制限された状況で紐の長さを知覚する課題を行った.被験者は4名であり,様々な高さから吊り下がる紐の下端を持って自由に動かすことにより,紐の上端(紐の長さ)を報告するように求めた.本課題を能動的な情報探索場面と捉え,課題終了後の動作の説明などを参考にしながら,課題解決に適した情報を抽出しやすい適切動作が選択される過程や,試行が進むことによって知覚が変化していく過程を詳細に分析した.特に,知覚した長さに関するフィードバック情報の有無が本課題の学習過程にどのような影響を及ぼすかについて検討した.その結果,紐の長さを正確に知覚できるようになるには,能動的な情報探索運動やフィードバック情報が重要であることが示された.また,ダイナミックタッチ研究の目的のひとつである刺激構造(不変項)についても検討され,手を動かしたときに生じる触覚的な情報だけではなく,紐の触覚的情報と視覚的情報の関係についても議論された.