生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
特集2:生態心理学とリハビリテーションの融合
環境のレイアウトや作業に関する手順が行為に及ぼす影響―マイクロスリップの観点から―
中尾 和夫上西 啓裕池田 吉邦有馬 聡浦 正行安井 常正冨田 昌夫青木 恵美
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2013 年 6 巻 1 号 p. 53-56

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抄録

今回の研究では,行為の手順を意識した場合と環境を視覚的に識別容易にした場合,行為が容易に遂行できる ように整理した環境の場合における行為の円滑度を比較し,行為への環境の影響度合いを検討した.行為はイン スタントコーヒーをつくり好きな菓子を選びとるという行為を選択し,指標には生態心理学的な概念にあるマイ クロスリップをカウントした.マイクロスリップとは行為中に観察される円滑でない無自覚な4 種類の手の動き を指し,行為に柔軟性を与えると考えられている.対象は健常成人男性 15 名女性 13 名(平均年齢 25.2±5.9)を 無作為に 4 グループ,各グループ 7 名に振り分けた.これらのグループに課題1:操作を加えない基本的な環境 条件,課題2:遂行前に行為の流れを強制的にイメージ,手順を筆記,課題3:環境の全物品に文字でラベリン グ,課題4:遂行前に被験者任せの物品配置換えを各々施行してもらった.デジタルビデオに録画した行為を繰 り返し観察し,検者 3 人が一致したマイクロスリップのみカウントし,平均値と標準偏差を算出した.結果は, 課題1:平均 14.6±7.2/回,課題2:平均 13.4±6.2/回,課題3:平均 9.9±5.3/回,課題4:平均 8.7±5.2/回と課題3 と4 でマイクロスリップが少ない傾向となった.結果から,行為手順を意図したり言語化し意識するより,環境 に配慮した方がマイクロスリップの出現に大きな影響を及ぼし,行為が円滑に行える傾向が示唆された.

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© 2013 日本生態心理学会
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