生態心理学研究
Online ISSN : 2434-012X
Print ISSN : 1349-0443
特集2:生態心理学とリハビリテーションの融合
嚥下障害を有する脊髄損傷者の活動性に着目した治療介入
鎌田 優子真下 英明
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2013 年 6 巻 1 号 p. 73-75

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抄録

嚥下障害に至る原因は様々あるが,加齢などの生理的な影響に,何らかの疾患が加わり活動性が低下するとその症状はより一層進展してしまう.今回報告する症例は,脊髄損傷によって活動性が低下し嚥下障害となり,一般的な嚥下アプローチを受けたがその後も誤嚥性肺炎を繰り返していた経過から,嚥下障害の問題の本質は頭頚部だけでなく,全身的な身体の活動性の低下にあると考え,介入を行った.まず脊髄損傷により内・外環境との関係性が途絶え内に固定的な身体となり,嚥下に必要な筋活動や呼吸などが機能し難くなっていたため,セラピストによるゆすりや自身の動きによるダイナミックタッチによって内・外環境との知覚循環を改善し,起居動作を利用して嚥下関連筋群を促通したことにより,嚥下運動に改善をみた.さらに活動性に介入したことで,嚥下以外の場面においても能動的かつ選択的な運動場面がみられるようになった.今回の症例を通して,「自ら動ける体つくり」は「自ら食べられる体つくり」につながり,作業療法士や理学療法士の嚥下への介入に意義があることを再確認した.

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© 2013 日本生態心理学会
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